二次試験・2 〜まぁ、どうぞ〜






合格したにもかかわらず、またスシを作り皿に盛って入り口へ向かい始めた

外へ出ると、入り口付近の木の上から中の様子を窺っていたサトツへ視線を向ける。

そして、そこからサトツの居る木の枝へ飛んだ。

サトツは驚きながら横に座ったを見る。

「・・・何でしょう?」

「あそこにいても退屈だから。あと、これ、お裾分けです」

そう言ってはサトツに先ほど握ったスシを皿ごと差し出した。

これにもサトツは多少驚く。

「これは・・・有難う御座います、いただきましょうかな」

サトツはスシを口へ運んだ。

はそれを見ながら、あ、口ちゃんとあったんだ、などと思っていた。

「わたしはスシと言うものをはじめて食べたのですが・・・・美味しいですよ。殿は料理もお上手なのですね」

「まぁ、不味い料理だけは食べたくないわよね」

少々、的外れな返答をしながらはすっと立ち上がった。

その目は何処を見るわけでもなく、ただ真っ直ぐ向けられている。

サトツはそんなを見てふっと表情を和ませた。

がサトツを振り向く。

「何?何か面白いことでも?」

サトツはを見ると直ぐに目を伏せて笑みを作った。

「いいえ、なんでもありません。ただ、殿と初めてお会いしたときの事を思い出しましてね」

はそれを聞いて空の彼方へ目を細めながら視線を遣った。

「・・・・・はじめて会ったとき・・・のこと・・ね・・・・・・」








  一面が遺跡。

  古い古い、過去を知るための産物。

  遺された伝言。

  わたしはこれが好きだ。

  古を知るのは興味がある。

  だが、依頼を受けたとはいえ、こんな不細工の顔を見ながらここに居るのは不本意だわ。

  しかも、その不細工が一人ではなく、7人もの団体さんなんて。

 『流石は始末屋さん、猛獣はお手の物ですな』

  汚い笑いを浮かべて一層その存在自体を汚くする大男。

  わたしはその男に一瞥して目を閉じた。

 『約束の報酬額、予定通り現金でいただくわ。お支払い願いますか?』

  特に抑揚も付けずに吐いた。

  それが素だからしょうがない。

  それに、どうせ存在自体忘れてしまう男だ、構わない。

 『いや、まだだ』

  わたしは一瞬だけ眉をピクリと動かした。

  この男、今何と言ったのかしら?

  ”まだ”ですって?

 『”まだ”とは?わたしは依頼どおり仕事を済ませたはずですが』

 『もう一つやって貰いたいことがある。これを済ませてくれれば倍、払おう』

  報酬額が増えるのは構わない。

  だけど、こいつはルール違反。

  ・・・・・少しは期待をしてみようかしら。

  チャンスを与えてみよう。

 『内容によるわ』

 『そうか、じゃあ・・・』

  だから、その醜い顔で一層醜くなるのは止めて頂戴。

  救いようがないわね。

 『この遺跡を始末してくれ』

 『!』

  この馬鹿、今一番救えないことを言ったわ。

 『無理ね』

 『なんだと!?』

  それはこっちのセリフ。

 『このガラクタを壊すだけで報酬が倍になるといっているんだぜ!なぜだ!!』

  ガラクタはそっちでしょうに。

 『内容によるというのを聞いていなかったのかしら?わかったら、報酬金、さっさと払って下さいね』

 『ふんっ、わかんねぇーな。内容によるだと・・・?そんなもん、理由にもなりゃしねぇ、しっかり説明してもらわねぇと困るな』

 『面倒だわ。・・・・わかりました、報酬はいりませんので、これで失礼させていただきます。以後ご依頼はしませぬように』

  そう言って、踵を返した。

  折角チャンスをくれて遣ったのに、こいつら馬鹿だわ。

  わたしに向かって鶴嘴投げてくるなんて。

  そのまま右手で取ってやったらやつらかなりビビッちゃってるわね。

  わたしの腕にまかせて依頼したんじゃなかったのかしら?

 『野郎どもやっちまえ、おめぇらは向うの取り壊しにかかれ!』

  リーダー格の不細工と4人はこっち、残りは遺跡の取り壊し。

  味なことやってくれるじゃないの。

  最優先は遺跡ね。

  そう思って向かおうとしたら私の真横に紳士と言う言葉が似合いそうなそんな人が後ろから現れた。

  そしてわたしに指示した。

 『わたしが遺跡の方へ行きます』

 『まかせました』

  わたしはそれだけ言って目の前に居る不細工5人の鳩尾にもれなく一発ずつの拳をプレゼントした。

  肉弾戦はあまり得意じゃないのだけど。

  悶絶しているやつらを一瞥して顔を上げれば、そこには先ほどの人物が遺跡を取り壊しに入っていたやつらを止めて一箇所にまとめているところだった。

 『いや、助かりました。あ、わたしはサトツと言います。先ほど遺跡荒しが入ったとの連絡を受けましてね。
  あなたのおかげで貴重な文化財が壊されずに済みました。本当に有難う御座います』

  わたしは多分、その時すごく不思議な顔をしていたんじゃないかと思う。

 『なぜ、あなたが礼を?通常で考えればわたしが言うべきだし、どちらかといえば咎を受ける方だと思うのだけれど』

 『そうでしょうか?わたしはそうは思いませんよ。なぜなら、あなたはこいつらからこの遺跡を守ったではありませんか。
  十分礼を述べるべきだと思いますよ、ところで、失礼ですがあなたの名前・・・』

 『ふざけるなぁ!』

  サトツと言う人物の言葉を遮って不細工が身体を起こした。

  確かに力はないほうだけど、こんなやつらも伸せない様じゃ、わたしもまだまだね、それとも体力だけは自信があるのかしら。

 『ふざけるなですって?・・それはこちらのセリフ。先ほどから黙って聞いていれば寝言ばかりほざいて。
  寝言は寝てから言いなさい。・・・・そういえば、あなた先ほど”なぜ”とわたしに聞いたわね?いいわ、冥土の土産に三つ教えてあげる』

  そう言ってわたしは身体を起こしかけの不細工の元へ歩み寄った。

  そして、鳩尾に思いっきり足を乗せてやった。

  苦しそうに顔を歪めるけど気にしない。

  どうせ、数分後こいつはこの世に居ないから。

  その存在自体。

 『一つ、わたしは事前に依頼されたことしかこなさない、当日付け加えられても断ることが99.99%。
  二つ、仕事の依頼を受けるか受けないかはわたしの感性にほぼ沿っている。これに沿わなければいくら報酬が高くても受けない。
  三つ・・・・わたしは遺跡を尊いものだと思っている。遺跡とは壊すものではなく、未来へと遺さなくてはならないもの。
  その遺跡をガラクタ呼ばわりした挙句、なんとしてでも壊そうと言うその精神、虫唾が走るわ。
  過去、盗賊と呼ばれるやつらが遺跡に関して仕事を依頼してきたけれど、彼らは壊そうなんて微塵も思っていなかったわ。
  寧ろ遺そうとしていたわね。あなたたちにもそれぐらいあるのかしらとチャンスを与えたのだけれど、無駄だったようだわ。
  ・・・・・・あなた幸運かもしれないわね。わたしこれだけ一気に喋ったの、10年ぶりぐらいなの。よかったわね』

  リボルバー式B-1218/NQを具現化して銃口を男の頭に向ける。

  相当焦っているみたい。

 『できれば仕事以外の殺生は避けたかったのだけど、あなたにはどうも我慢できないの。だから・・さようなら』

  言って、引き金を引いた。

  重たい音とともに発せられた弾は男の脳天に命中。

  そこから半径15pが消え去る。

  必然的にわたしの足元には首のない肉の塊だけが残った。

  それも目障りだったからその後直ぐにそれも消してやったけど。

 『あなたはもしかして、始末屋・・さん、ですか?』

  サトツと名乗っていた人物が恐る恐るといったような感じで私に聞いてきた。

  そういえば、先ほどからそんな話をしていたわね。

 『ええ、そうよ』

  そう答えてわたしは踵を返す。

 『それではさようなら』

 『あ、待ってください!連絡先を教えてもらえないでしょうか?』

 『・・・・誰か始末したい人でも?』

 『いいえ、違います。なんとなくです』

  わたしはため息を一つついてサトツの下へ歩み寄った。

  そして紙を差し出す。

  携帯番号とメールアドレスがかかれたものだ。

 『どうぞ、なくさないで下さい』

 『噂によるとよく連絡先が変わると聞いていますが?』

 『聞いておきながらそんな質問をするの?』

 『ああ、いえ、好奇心です』

  わたしはまたひとつため息をつく。

  説明するのは面倒臭いけど仕方がない。

 『この紙には念がこめられています。そして、この文字も念。この念はわたしの携帯とクしています。
  連絡先番号とアドレスが変わると同時にこの文字も変わります。変えてから7日間は赤い文字、それ以外は青い文字で表示されます』

 『なるほど』

 『これだけが、わたしの連絡先を容易に知ることが出来るものですのでなくさないでくださいませ。それでは』

  そう言って去ろうとするわたしをサトツはまたひきとめた。

 『まだ何か?』

 『名前を、差し支えなければ教えていただきたいのですが』

 『・・・・・

  そうして漸くわたしはその場から立ち去ることが出来た。









「喋り疲れた記憶しか残っていないわ」

はそう言うと木の幹に背を預けてサトツと向き合うような格好をとる。

サトツは座っているが。

今まで目を伏せていたサトツがそれを聞くととを振り向いて苦笑いした。

「ははは、そうですか?・・・・でも、あの時はまさか家のものだったとは思いませんでしたよ。5年前・・・でしたね」

「まだあの紙は持っているの?」

「しっかり持っていますよ、なくすな、とおっしゃったではないですか」

そう言って微笑むサトツには面食らうと”そういえばそうね”と一言呟いた。

「でも、私がもう一つ驚いたことがあります」

サトツはそう言って人差し指を立てた。

はあまり関心がなさそうにサトツを見る。

「それは殿の年齢です、先刻、話しているところを聞いてしまいましてね。今年で19だったとは・・・」

「幾つだと思っていたの?」

「これは、失礼しました」

「別に気にしていないからいいわ。ただの好奇心よ。それで、幾つだと?」

サトツは暫く無言のままを見ていたが徐に口を開いた。

「五年前で既に10代後半だと思っていました。ですから、今年で既に20代だと」

「よく言われるから」

は素っ気無く返す。

目を空に向けると一陣の風が吹いた。

「5年前は14ね」

「そうなりますね・・・・
「ざけんなてめぇー!」

「「!?」」

サトツが何か言いかけたとき試験会場内から怒鳴り声が聞こえてきた。

サトツとはそちらの方を振り向く。

何か中はざわざわとしているようだ。

「何かしら?」

「きっとメンチ殿でしょう。不味い事にならなければいいのですが・・・」

「・・・・わたしは取り敢えず会場内に戻ります」

「ええ、そうですね。あ、皿」

「忘れていたわ」

そう言ってはサトツから皿を受け取ると木の枝から飛び降りて会場内へ戻っていった。



「(殿、あなたは外も内も歳についていけていない。外は高く内は低く・・・・見ているだけで痛ましい。
  どうか、この試験で何かを見つけてください)」



サトツはただの後姿を見つめていた。









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なんなのこの話・・・・
分けわかんないったらないわ。別名、回想編ってところかしらね(失笑
サトツさん、さんの保護者化(なんじゃそりゃ
う゛〜〜・・・・さらばです(逃/マテこら


読まない方は閉じてください





















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