暗い、薄暗い地下の道
そこに集いし者達は己が思いを内に秘める
そして待つ、来るべき機を・・・・
一次試験・2 〜試験開始〜
が寝ている間、大分この試験会場も人で溢れてきた。
ナンバープレートはもう290を超えてきているようだ。
・・・チンッ
そう音がしてまた一人受験生が試験会場に入場する。
どんなやつが来たのかともう既に到着していた受験生達がそちらを見やる。
・・・が、直ぐに顔をそらした。
なぜなら、今しがた入場してきたその受験生は別の意味でやばかったからだ。
顔や服などに大きめの虫ピンのような針をいくつも刺している。
会長秘書は特に驚いた様子も見せず、その人物に”301”と書かれたプレートを渡す。
そしてまたどこかへ去っていく。
針を刺したその人物は特に周りを見ることも無くカタカタと音を立てながら足取り軽く壁際に向かって進んでいった。
真正面に気配を感じたヒソカは、しかし警戒もろくにせずにトランプタワーを作っていた手を止めて顔を上げた。
「やぁ◆久しぶりイルミ」
そう言うとヒソカは顔に笑顔を浮かべた。
一方、イルミはその不気味なまでの顔に表情も浮かべずに訂正する。
「ギタラクル。そう呼んで」
言って、ヒソカからその腿を枕代わりに寝ているに目をやる。
そしてまた直ぐにヒソカに視線を戻すと口を開いた。
「、寝てるの?」
「うん一週間徹夜の仕事を請けたらしい◆珍しくお疲れのようだよ」
「ふ〜ん」
素っ気無い返事をしてイルミがしゃがみ込む。
そしての顔をじっと見る。
周りの目から見ても観察しているようにしか見えない。
そのとき、ふとが眠気眼をイルミに向けた。
そして、左手で髪を一梳きしてから一言。
「・・・・・イルミ・・?おはよう・・・――」
どこか寝ぼけた風にも見えるをそのままの状態で見つめるイルミ。
「うん、おはよう。それから俺はギタラクルね」
「ん、ギタラクル・・・・」
まだちょっと開きそうにない瞼をそのままに、首だけ上に反らして見上げる形でヒソカに視線を合わす。
「ヒソカもおはよう―――・・」
「おはよう、」
それを聞いて後、はばっと、身体を起こした。
そしてそのまま両手を頭上に伸ばして伸びをした。
腕から肩にかけて全体をストレッチする。
幾分、覚醒してきたようだ。
それを待っていたかのようにヒソカが口を開いた。
「よく寝れたかい?」
は振り向いて改めてヒソカと顔合わせする。
「ええ、お蔭様で。イル・・ギタラクルは今来たの?」
「うん」
「そう」
なんとも味気なさ過ぎる会話を繰り広げるイルミと。
一気に会話が終わってしまう。
丁度そんな時がいきなり携帯を取り出した。
そう、どこからともなく。
が携帯のボタンに指を走らせる。
ピッと電子的な音を立て携帯の画面には受信メールの一覧が表示される。
今しがた受信したメールを開くと、送信者”セゾン”となっていた。
本文を開いて目を通す。
『 、元気してるか?兄ちゃん達は元気だ!
今回メールしたのはわけありだ・・・多分のことだから想像つくと思うが
仕事一件ご指名で入っている。それの可否を聞きたい。
メールでも電話でもいいからこれ見たら即行で返せよ(兄ちゃん的には電話がいいな)
んじゃ、待ってるぞ。
追伸・気まぐれなんかで仕事断るなよ 』
読み終わるとそのまま携帯画面を凝視する。
「何か面白いことでもあったようだね◆」
「・・・別に」
ヒソカが話しかけてきたがとりあえず、受け流し実家へ電話をかける。
そのとき、ふと見えない何かが一瞬だけの周りを包んだ。
は壁を正面にして立つ。
携帯を左耳に当てて。
(『こちら家執事室』)
(「執事長?だけど、セゾンに換わって」)
(『!・・様、はい、今、繋がせていただきます』)
言って、執事長の男は内線へと繋げたようだ。
出るまで待つ。
だが、の周りではちょっと普通ではないことが起こっている。
それは、先ほどからしゃべっているの声が何も聞こえないと言うこと。
しかし、は壁に向かっているので他の受験生達がが本当はしゃべっていると言うことには気づくことはないが。
そんなをヒソカと既に立ち上がっているイルミはじっと見ていた。
(『おぉ、久しぶりだなぁ!わざわざ俺のために電話してくれたのか?
ほんと、可愛い妹だよお前は』)
電話の向こうではうんうんと頷いているということを露とも知らないは顔をしかめた。
(「別に兄さんのためではないけど。メール打つの面倒臭いだけ。
久しぶりに電話したと思ったらまたそういう阿呆臭いことするのそろそろ止めてくれない?」)
そうさらっと述べて空いている右手で髪をまとめる。
(『・・・う゛、ひでぇ、ほんっと可愛くねぇ妹だな、お前は。嫁の貰い手なくなるぞ』)
(「お生憎様。兄さんにそんな心配されるような筋合いはないし、どこかに嫁ぐ気もありません。
それから、矛盾したことを言わないで頂戴。本当にわたしのまわりの人ははっきりしないことを言う人が多くて困るわ」)
(『・・・・・・・兄ちゃんショック・・・・・・・』)
それにはかなり不機嫌オーラを発しながら顔を顰める。
(「どうでもいいから、さっさと本題に入ってくれない?兄さんと一秒でもくだらない話をしている暇は無いの・・・・!」)
静かに語尾を強める。
今も電話越しのセゾンは落ち込んでいる。
(『・・・・はいはい、そうさせて頂きますよ。とりあえず、大まかな内容だけな。
内容は暗殺。期限付きで昨日から一週間以「無理」)
皆まで聞かず即答する。
今、電話の向こうではセゾンが眉根を寄せている。
(『お前なぁ、人の話しは最後まで聞いてから答えろよ』)
(「いいじゃない、それ、つまり一週間以内に依頼完了しろってことでしょ。
物理的に無理だもの。今わたし、ハンター試験会場に居るし」)
そう言うと、は携帯を耳から離す。
(『何ぃーーーー!?お前ハンター試験受けにいってんのか!!?』)
大音量で叫ぶ。
それを全て聞き終わった後また携帯を耳に当てる。
(「そんなに驚くことなのかしら?心外だわ。まぁ、それはいいけど、そういうことだから」)
(『いや、俺はもう資格持っているのかと思ってた。ま、いいさ。そういうことなら構わない。
今回の仕事はこっちで済ませるから、は頑張れよ』)
(「頑張るほどのものでもないでしょ、じゃぁね」)
(『お前、もう少しはか<ピッ>)
今日で二度目の途中切り。
恐らく向うでは眉根を寄せながらブツブツ言っているんだろうな、と思いながら携帯に一瞥。
そして直ぐに携帯を仕舞う(といっても、またどこへともなく消したんだが)
同時に掛けていた念を解いた。
髪を纏めっぱなしにしていた右手を髪から放し、左の方へ向き直る。
ヒソカとイルミが居る方向だ。
そこに電話する前からいる二人はそのときと変わらず、だが終わるのを待ってましたというような雰囲気をかもし出していた。
ヒソカが口を開く。
「君の能力は本当に便利だねぇ◆内緒話が本当に内緒話になるわけだ」
イルミは無言のまま。
先ほどまで確かトランプタワーを作っていたような気がしたが今そのトランプはなくなっている。
「話の内容はお仕事かい?」
「ええ。断ったけど。・・・・・わたしはそろそろここ離れるわね。何故かは知らないけど注目されてるみたいだし、その対象がどうやらヒソカのようだし。
それに、イルミの方はもう話したくないようだし。じゃあね」
言ってはヒソカ達の元を離れていく。
それを見届けて後イルミもヒソカに”じゃ・・・”と告げてその場を去っていった。
残されたヒソカは口に笑みを浮かべながら、消したトランプをまた出して新たにタワーを積み始めた。
ヒソカの元を離れたは微妙な視線を感じつつ人の間を当ても無く歩いていた。
そんなときふと、後ろから声をかけられた、聞きなれない声。
「やぁ、君、新人だろ?・・・・あのヒソカとは知り合いなのかい・・・・・・?」
振り向くと、男にしては背の低めな見た感じから中年親父がそこに立っていた。
は興味なさ気に名も知らない中年親父を見下す。
すると、踵を返してまた歩き始める。
それに中年親父は慌ててを呼び止める。
「あ、ちょっと待ってくれ・・!(無視かよ」
「何?」
また振り向いて一言。
中年親父は頭を掻きながら言葉を発する。
「俺はトンパって言うんだ、君は?」
「=」
言ってまた踵を返し歩み始める。
それをまたトンパが慌てて止める。
「あ、もうちょっと待ってくれ!(話聞けよ、少しは」
今度は面倒臭そうに振り向いて言葉を吐く。
「・・・何?まだ何か用??」
トンパはどこか眉根を寄せながらまた頭を掻く。
「いや、俺はこの試験を10歳のころから35回も受験していてね、この試験のベテランみたいなやつさ。
何か知りたいこととかあったらいつでも何でも聞いてくれいいよ」
半分強引に話し始めるトンパ。
いつもならその話が途中でもさっさと行ってしまうところだが、それでもしつこく呼び止められそうな気がしたので面倒だが全て聞く。
なんとなく聞いていたが最後の”何でも聞いてくれ”ということに反応して質問する。
「じゃあ、質問。ヒソカがいろいろ注目を集めているみたいだけどなぜ?容姿だけが問題じゃなさそうなのだけど・・・?」
トンパはヒソカかよ、とか思いながら口を開く。
「ああ、ヒソカは去年の試験で試験管を一人半殺しにして失格しているんだ。きっとそれでだよ」
「ふ〜ん、ま、やつなら当然あり得ることね」
そう誰ともなくは独りごち顎に左手を添える。
説明していたトンパはその反応を見て疲れたような表情を密かにする。
「(反応それだけかよ、性格は外見に沿わねぇな)!そうだ、君のど渇いてないか?」
そう言ってキルアのときのように缶ジュースを2本取り出す。
「よければこれあげるよ、お近づきの印だ」
そう言って一本を差し出す。
はそれとトンパの顔を交互に見やってから手を伸ばした。
「ええ、貰うわ」
受け取ると缶ジュースのふたを開ける。
そして、他にはわからないが念を発動した。
ごく一瞬、ほんの少しだけ。
その後ジュースに口を付けた。
トンパはそれをじっと見つめる。
「(ヒソカを知っていたようだから駄目かとは思っていたが、上手くいったな。
まぁ、女に下剤は少しかわいそうだがな・・・・)」
自然と口に怪しげな笑みを浮かべる。
は一口飲むとトンパにだけ聞こえるぐらいのごく小さな声でつぶやく。
「トンパだっけ?味はいけるけど、下剤だけはやめて頂戴」
そう言って目を細める。
どこか冷たい目。
それにトンパは背筋に走る悪寒を感じながら缶を手に去っていくの後姿を見送った。
「(この能力使って無害にするのはいいけど、どんなものが入っていたのかわかるところはちょっと欝ね。呪うわよ、お父様・・・・・)」
ジュースを飲みながら辺りを歩く。
一分ほど歩くと缶の中身はなくなってしまった。
その空き缶を持っている左手を反すと空き缶はやはりどこかへ消えてしまった。
暫くその何も残っていない手のひらを見つめているとずっと後ろの方で叫び声がした。
「ぎゃああぁぁ〜〜〜〜〜!!!!」
その後、あまり大きくはないがヒソカの声がする。
「(満喫中・・?)」
そんなことを思いながらなんとなく歩いていた先に壁が見えた。
もう、ほっつき歩く気はないのでそこに背を預けて目を閉じる。
ジリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリ
数分後けたたましい音。
顔を上げると反対側の壁のパイプの上に人が立っていた。
実家の執事に似ているなとか思いながらじっと見る過去会った記憶がある。
「(・・・・・!ああ、確かサトツと言ったかな?仕事の依頼受けていないやつの名前覚えているんなんて、わたしにしては珍しいわね・・・)」
不意にその人が話し始める。
「只今をもって、受付時間を終了いたします・・・・・では、これよりハンター試験を開始いたします」
そう言うとその人は徐にパイプから降り、地に着地した。
「こちらへどうぞ」
ついて来るように促す。
をはじめ、その場に居た全員がそれに従う。
そう、これから開始するハンターになるための道へ。
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なんか、やけに長くなった気が・・・・・(-_-)
しかも、試験開始が終わりから12行目以降ってどうよ・・・;
ヒロイン殿の性格、はちゃめちゃっぽいですが、別に気分で変えたわけではないですよ;
意図的にというか、一言で言えばわからない性格・・・?(だめじゃん
いつでも素です。
ヒソカとは一番長い付き合い(?)です。詳しくはそのうち始める過去編等で(”など”って何だよ
大体はイルミほどではないですけど単調に話します、ヒロイン・・・
抑揚(?)付けて話すことなんて滅多にないです、ハイ。
とりあえず、こへんにしよう・・ネタばれしてしまう可能性が;
次からやっとこさ事実上の試験開始です。
様ここまで読んでくださって有難う御座いました。
もう読まない方は閉じてください。
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