青い空に浮かぶのは黒い黒い一組の翼。

太陽の光を反射してどこか儚げに黒を浮かべる。

その眩しいぐらいの青に。





     一次試験 〜変わった人〜








「(・・・人気の無い場所・・・・なさそうね)」

そんなことを思いながら遥か上空からその良過ぎるぐらいの視力で市というのにも頷ける位の大きさの街を見渡す。

少しばかり高度を下げて今行くべき目的の場所を探す。

「(ツバシ2-5-10・・・この辺かしら・・?――目立つのは嫌だけど仕方ない)・・・ルヴニール」

そう一言発すると今まで背にあったはずの翼が消えた。

宙にいるための手段を無くしたの身体は重力の働くまま下へ下へと落ちていく。

雲を通り越し、地上の状態はかなり細かなところまで見えてきた。

ふと真下を見ると直ぐそこまでと迫った、地上から見れば高い建物が建っていた。

「(ちょっとずれたみたいだけど路上に着地するよりはましね、人にもあまり目撃されないだろうし)」

何の建物かはわからないが、その屋上に近づくと、空中で3回転程してそこに着地する。

3時間ぶり位の地(といっても建造物だが)に足を付けると、は結いっぱなしにしていた髪を下ろした。

上空ほどは無いが心地良いというのに相応しいぐらいの風がそよぎの髪を揺らした。

髪を右手で一梳きしてそのままその手で押さえると、左手にどこともなく取り出した古風且つ上品な懐中時計を手にした。

開くとその繊細なまでの針は11を示していた。

「(この建物の確か向かいよね・・向かい)・・・・・・」

一拍後、左手を反すとそこにあった懐中時計はどこかへ消えてしまった。

そして、この建物の向かいの建物を確認すべく屋上から覗き込む。

屋上の囲い(と言ってもの足の丁度脛辺りまでしかないが)に右足をのせ、下を見ると小さな食事屋が見えた。

「(あれね、2-5-10。・・・階段から降りて行くの面倒臭いわね・・)!そういえば」

ふと何かを思い出したように宙を仰ぐ。

そして、左足も囲いにのせたかと思うとそのまま食事屋の正面入り口付近に向かって囲いを蹴った。

の身体はまた下へと落ちていく。

だが、踏み込み、自然落下を始めた辺りからふとが消えた。

そして、数秒後食事屋の正面入り口にいきなりが現れる。

その付近を歩いていた数人は自分の周りをきょろきょろしながら、頭上に?マークを浮かべていた。

そんなことは気にもとめず、は食事屋に入っていった。




入り口を開け中に入ると、食事屋独特の熱気と匂いがの肌と鼻をついた。

「いらっしぇーい!!ご注文は―――?」

将に料理真っ最中と言った店のオヤジが威勢良くに聞いてくる。

それに顔色も変えずには決まった言葉を吐いた。

「ステーキ定食」

店のオヤジはピクリと反応し次の言葉をかける。

「焼き方は?」

そしてまた、決まった言葉で返答する。

「弱火でじっくり」

「あいよ」

そこまで話すと、店の若い娘が案内をした。

「お客さん奥の部屋へどうぞー」

その言葉と仕草に倣いは店の奥の部屋へと歩を進めた。



部屋に入ると直ぐ目の前に鉄板に乗ったステーキ肉が目に入った。

部屋を見渡すと個室のようで質素なものだ。

店の娘がドアを閉めると下に落ちていくようなエレベーター独特のちょっとした無重力間が感じられた。

「部屋自体がエレベーターになっているのか・・・」

そう誰とも無く一人独ちると席に着く。

そして、もう食べごろになっているステーキをフォークで抑えながらナイフを走らせた。

丁度、先ほど時計は11時ごろを示していたので、本当にステーキ定食が出るとはあまり念頭に無かったはお昼にいいな、とか思いながら一口、口にした。

「(ん、なかなかいける・・・ここの店チェック入れとこ――・・)」

もくもくと食べ始める

そして、のチェックが入ったとは露とも知らないこの食事屋のこの個室は確実にハンター試験会場へと近づいていった。






「ごちそうさまでした」

綺麗に食べ終わり、両手を胸の前にそろえて食事後の挨拶を述べる。

そのとき丁度、部屋上部についていた電光掲示板が”B100”を示して、『チンッ』と鳴った。

扉が開き部屋の外側、ハンター試験会場が姿を現す。

その場に既に到着していた強面のおっさんやら不細工なおっさんどもが開いた扉を睨み付けるように振り向く。

しかし、出てきたを見てそのほとんどが拍子抜けした。

なぜなら、場違いなほどの容姿の娘が一人で扉を抜けてきたから。

それらに関心なくが会場内に入ると、後ろの扉が閉まった。

ぐるっと目だけで一通り会場を見渡す。

薄暗い、地下道のようなそこは、壁面に太目のパイプが幾筋も通っていた。

そんな状況を眺めていると、自分の斜め下辺りから声がした。

「ハイ、番号札です。左胸に付けてくださいね」

言って、なんか小っこい人がに数字の書かれた札を差し出す。

それをは受け取りながら内心、

「(・・・豆?・・いや、ジャガイモかしら――・・・・?)」

などと真面目に考えていた。

そんなことは知る由も無い会長秘書はに札を渡すと何処かへ行ってしまった。

残されたは手にしている札に視線を落とした。

そこには”49”とある。

どうやら、49番目にここに着いたらしい。

手にした札を左胸につけ適当な場所―壁際―へ移動する。

その途中、移動しながら右手を口元に当て欠伸を一つかみ殺す。

するとその直後間髪いれずに後ろから声がした。

「やぁ、欠伸なんかして眠いのかな?」

その声に聞き覚えがあって後ろを振り向くと案の定、予想していた人物がそこに立っていた。

「ヒソカ――・・・・一週間ぶり。そう、眠いのよ」

言うと、二人は暫くそのままでちょっとした沈黙が流れた。

それを不意に破ったのは

「そうだ、ヒソカ、ちょっと・・・・」

言って、ヒソカの腕を引いて壁際に来る。

そして座るように促すと、自分もその横に腰を下ろす。

「今からわたしは寝るので試験始まりそうだったら起こして」

そうして、は胡坐をかいていたヒソカの腿を枕代わりに横になった。

そんな一部始終を(こっそり)見ていた他の受験生達は我が目を疑い、そして心の中で叫び突っ込んだ。

「(あのヒソカの脚を枕代わりに寝るのかよ!?なんつー神経しているんだあの女!綺麗な顔しているのに・・・!!)」

他の受験生達が叫びつつ突っ込んでいる中、その突っ込まれている張本人はそろそろ夢の中と言ったところだった。

そんなの髪をヒソカは手で梳きながら問いかける。

「そんなに仕事、忙しかったのかい?」

頭上から聞こえる声に目を瞑りながら聞いていたはそのままの状態で答える。

「まぁ・・ね。一週間ほど徹夜の仕事が続いたから一睡もしてないの。だから、もう寝かせて」

そう言ったはもう殆ど寝ている状態のようだった。

ヒソカは、ほぼ寝顔になりつつあるのその顔を見て笑みを作ると、その髪をもう一梳きして言った。

「うん、おやすみ◆

それとほぼ同じか、それともその前からか、どちらにせよ規則的な寝息を立てては意識を手放した。





「はい、番号札。左胸に付けてくださいね」

「・・・・(99番か)」

プレートを左胸につけながらスケボーを小脇に抱え辺りを見回す。

「君、新顔だね、俺はトンパって言うんだ、君は?」

トンパと名乗った中年親父に顔を向けると、今しがた99番のプレートを付けた少年は口を開いた。

「俺はキルア。トンパさんは俺が新顔だって何でわかったの?」

そんなことを聞きながらスケボーを地に下ろし、右足だけ乗せる。

トンパは至極愛想の良い笑いを浮かべ、これまた至極自慢げに言った。

「キルア君か、よろしく。なぜわかったかって?俺は10歳のころからもう35回もこの試験を受けているんだ。
 まぁ、試験のベテランって所だな。この中で知らないやつはいないよ。!そうだ」

そこまで話すと何か思い出したかのようにゴソゴソと自分の服を探る。

すると、缶ジュースが2本出てきた。

「どうだい?お近づきのしるしに一杯。っていっても、ジュースだけどね」

言ってトンパは一缶を自分が飲んで見せると、もう一缶をキルアに差し出した。

その缶にキルアは疑う様子も無く逆に嬉しそうに手を伸ばす。

「ありがとう、トンパさん。俺、丁度のど渇いてたんだ。マジ嬉しい」

受け取った缶ジュースのプルタブを開けそのまま口にする。

それをトンパは見届けるようにその場で待つ。

そして、キルアが半分くらい飲んだところで不意に口を開いた。

「まぁ、何か知りたいことがあったらいつでも俺に話しかけてくれ、じゃぁな」

そう言って、やることはやったとでも言うようにトンパはその場を後にしていった。

キルアはというと暫くその後姿を見送った後まだ飲みかけの缶ジュースを手にしながらスケボーをゆっくりと走らせた。

「(んなこと自慢できねぇっつうの、一生言ってろ)」

辺りを見回しながらスケボーを走らす。

その時目の端に入った光景にふと注目する。

そこには自分と同じような臭いのする男とその男の腿を枕代わりにして寝ている女の姿があった。

そして、もう一つ目に付くのは、その周りには誰も近寄らずぽっかりと穴になっているということ。

それが何となく気になって先ほど別れたばかりのトンパのもとにスケボーを走らした。

「トンパさん、あそこの壁際にいる人って・・・?」

率直にそう聞くと、トンパはキルアに向かい直って答えた。

「44番、奇術師ヒソカ、去年合格確実と言われながら試験管を半殺しにして試験失格になったやつさ。
 で、そのヒソカの脚を枕代わりに寝ている女の方は49番、名前はまだ聞いていないが新人だ。
 どちらにしても、あまり奴等には近づかない方が身のためだと思うよ」

「ふ〜ん、ありがとう、トンパさん」

必要なことを聞いてもう用はないと判断したキルアはまた例のスケボーでその場を後にしていった。

そして、受験生と受験生の間から44番と49番(寧ろ49番)を垣間見る。

「(退屈せずに済みそう・・・かな・・・・・?)」

そんなことを思いながら飲み終わった缶ジュースを見て意外といけるななどとも思っていた。







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はい、無駄に長くなりそうな予感な一次試験・一話終了です。
てか、すみませんね、ヒソカの脚枕代わりにとかしちゃいまして;
管理人ヒソカ好きなんですよ、イルミの次に(だからなんだよ)
だから、彼らとの絡みが多くなる予感です。
てか、夢なんですかねこれ?(聞くな
あ、ルヴニールというのはフランス語です。
意味は戻るです。なんでフランス語かといいますと、たまたま直ぐ横にフランス語辞典があったからです(分かり易い
例えばこれがイタリア語辞典だとかトルコ語辞典だとかロシア語辞典などなどでしたらそれらになっていた可能性大です。
中国語辞典だったらやめたかもしれませんけど。
これからなるべく更新速度をナマケモノから亀ぐらいにグレードアップ(してないよ)していきますので、
是非是非様、この先も末永くしていただけると幸いです。
それでは失礼。


もう読まない方は閉じてくださいね。






















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