無機質の壁に囲まれた

無機質の空間

下へ下へと降りていく






   三次試験・2 〜時間〜









あの部屋から出てから暫く、何もない通路を、ポックルの順で進む。

ずっと会話はない。

「なぁ」

「何?」

「何もないな・・」

「そうね」

淡々とした会話にポックルがの後ろで頭をぐしゃぐしゃと掻く。

「(なんて辛気臭いんだ!これじゃ、俺が持たない)」

などと思いながら進んでいると開けた場所へ出たようだ。

がそうしたように、ポックルも足を止める。

「何だ、ここは?」

「さぁ。でも、団体さんが来たようよ」

「え?」

ポックルが顔を上げると、正面の遠くの方にあった扉が開き、10人ほどの人間が出てきた。

『そいつらは服役囚だ。今からそいつらと戦ってもらう、それじゃ、スタート』

そういうのと同時ぐらいか10人の服役囚達が勢いよくこちらに向かってくる。

「五人ずついこう!俺は右の5人を・・・」

言ってを振り向くと、は弓に4本の矢を番えていた。

「え!?」

そして、ポックルが声を上げた瞬間、矢が放たれた。

それは一本も外れることなく真ん中辺りに集中していた4人に命中。

すかさず、はまた四本の矢を番えそれぞれの端から数えて2人目と3人目の2人ずつに命中させる。

そして、とどめに、2本を番え、残っていた2人を倒した。

その間、約3秒。

ポックルは驚きすぎて口をポカンと開けたままで目が見開いたまま。

目が点、空いた口が塞がらないとはこのことだった。

「す、すごいんだな・・・って。矢を番えているところが全然見えなかった」

「そう?行きましょ」

言って歩き出す

ポックルがそういうのも無理はない。

なぜなら、が矢筒に手を伸ばしたのは最初の一回目だけだ。

詳細はこうだ。

まず、矢筒から1本矢を抜く。

そして、その形状を記憶し、念で同じ形状の3本の矢を具現化する。

それら4本の矢を放ったら、すかさず同じ形状の矢、4本をまた具現化させ放つ。

その要領で最後の2本も行ったというわけだ。

勿論、この具現化させた矢には何か別の念をこめ、別の能力を付加させていると言うようなことはしていない。

ただ単に具現化させただけだ。

いいとして、歩き出したの後をポックルが小走りで追う。

通路に出ると先ほどの部屋の扉が閉まり始める音がした。

それを、確認するとは具現化して囚人に突き刺さったままの矢を解除する。

必然的に、矢が刺さっているのは一人だけという事になった。

それをモニターで見ながら試験官であるリッポーが独り言ちる。

「ほぉ、面白い・・・・か」

それは誰にも聞こえることはない。










「くっ」

「・・・・・・大丈夫?」

「あ、ああ・・・大・・丈夫・・・だ」

「・・・・・はぁ・・・・・」

は大きな溜息をつく。

その理由は今のこの状況。

数回にわたって、最初のときと同じような戦闘があったが、それも段々と人数が増してきたいるようだった。

それで、先ほども30人ばかりの相手を倒してきたところだ。

ほとんど、一人で倒しているから、実質ポックルは何もしていない状態。

しかし、その数分前の戦闘で、敵の攻撃をかわしたポックルがその拍子に足を挫いたらしい。

しかも、その瞬間に掠める程度だが攻撃を喰らい、左腕負傷中。

自分で応急処置はしたようだったがまだ血は止まっていないようだった。

は立ち止まって少し遠くにいるポックルを振り返った。

足を引きながら歩いているので遅々として進まない。

は引き返してポックルの元まで歩いた。

「とりあえず、壁に背をあずけて靴脱いで座って頂戴。怪我、診るから」

「・・・すまない」

ポックルが座りながら言う。

「本当ね」

「・・・・・・・う゛」

すっぱり言われてグサッとくるポックル。

言った本人は片足を地に付けながらポックルの足の状態を見た。

左右に動かしてみたりする。

「これは痛い?」

「いや」

「これは?」

「いや」

「これは?」

「っ」

「痛いのね(・・念で一気に戻すわけにもいかないか・・・)」

顔を顰めて小さく声を漏らしたポックルを見てが言う。

どこからか出したジュラルミンケースを開いて包帯と塗り薬を取り出す。

包帯も塗り薬も念で物質化している。

包帯は何もしていないが、塗り薬の方は徐々にその部分の状態を元の健康状態まで戻すように念を込めてある。

恐らく数時間で健康状態に戻るだろう。

薬を塗って包帯を巻く。

とはいえ、直ぐにはしっかり歩ける状態にはならないのが現状だ。

足の方を完了し、今度は左腕を診る。

そんなをポックルはじっと見ていたが、急に顔をそらした。

赤くして。

いきなり反らしたことには疑問を抱いて顔を上げる。

「?何」

「い、い、いや、なんでもない!(胸が・・・)」

なんでもないようには見えない・・・。

そう、ポックルが見たのは、屈んでいるためにYシャツの間から見えてしまったの胸の谷間。

年頃の少年には刺激が強いか・・・?

「ま、いいわ。終わったから、さ、行くわよ」

言って手を差し出す。

ポックルがまだ顔を赤くしながらその手を握り身体を起こす。

「本当に、すまない」

「もう、パスできればそれでいいわ。行きましょ、時間が惜しいわ。肩貸すから」

「ありがとう」

「・・・・・・・・」

ポックルに肩を貸して歩き出す

極力、ポックルに負担がかからないように支えて歩く。

「(・・・・わたし、何やってるのかしら。本当に・・・・・調子狂ってるみたいね)」

そんなことを思いながら先を目指した。

始終、ポックルの顔は赤かったが・・・







あれから数時間、ポックルの足はもう完治していた。

といっても、の念能力によって健康状態に戻っただけなのだが。

「びっくりだ、完全に治っている。腕の傷口も殆どわからないぐらいだ」

「そう、それは良かったわね」

当初と変わらず淡々とした言葉にポックルも少しは慣れてきたが、やはりどこか納得できない様子だった。






『よくここまで来た、両人。ここから先は特別、武器交換はなしで進んでもらう』

いとある扉の前まで来るといきなりスピーカーからリッポーの声が流れた。

「どういうことだ?ここは交換の道と書いてあった。ということは下まで武器交換で行くのでないのか?」

ポックルが疑問を言う。

はただ立って聞いているだけだ。

『特別コースだ。私は試験官だからどんな特設コースも作れるのだよ』

「なんだ、それは!?」

「(暇やっているのね)それで?どんなコースなのかしら。時間が惜しいからさっさと説明して頂戴」

『いだろう。この扉の向うでこれから闘ってもらう。人数は今までと比べ物にはならん。こいつら全員を倒せ。
 但し、お前ら二人のどちらかが、傷一つでも受ければそこで20時間過ごしてもらう。逆に二人とも無傷なら下まで5分でいける道へ進んでもらう』

「傷と言うのは掠っただけでも駄目かしら?」

『当然だ。どんなに小さなものでも傷と認められるものはそれとする』

「なんだって!?そんなの無 「黙ってなさい、これが試験なのだから仕方ないわ。扉を開けて頂戴」

『互いの武器を戻したところで扉を開ける』

自分の言葉を遮って話を進めたをポックルは顔を顰めながら見つめた。

は方から矢筒を下ろす。

「無理だ、こんなの。いくらなんでもいき過ぎだ!」

は武器をポックルに返しながら口を開く。

「無理ではないわ。あなたは何もしないで相手の攻撃を避けていてくれればいいから、行くわよ」

「な、ちょっと待てよ」

「わたしのならさっき貰ったわ」

そう言ってはB-1218/NQを左手に掲げながら開いた扉に足を踏み入れた。

ポックルはそれを見て自分の服を確認したが、確かに、渡された銃も弾もそこにはなかった。





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この回で三次試験終わらそうと思っていたのに・・・・
ということで、もう少し三次試験にお付き合い下さい。
ていうか、振り回されているポックルが不憫だわ・・・



閉じてください





































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