「肩慣らしにもなんねぇ・・・だりぃ」






   第二十二話   依頼




「一度200階まで上っていますね。190階まで行って下さい」


「いや、150階でいいよ、サンキュな」


言って、は審判からチケットを受け取る。


次に向かうは上りのエレベーター。







「上へ参ります」


「150階ね」


エレベーターガールにそう一言言うと、はエレベーターの壁に背を預けた。


150階に着くまでは暫くの時間を要すためエレベーターガールの話を長々と聞く。


正確には聞き流しているに過ぎない。


チィンと軽い音がした後、エレベーターガールが150階についたことを知らせる。


は一言礼を言うと150階ロビーに足を運んだ。


そのロビーの端―窓際―に設置されているベンチに腰をかける。


そうして例の念―マリーナに頼んだものだ―を発動してノートパソコンを取り出しパワーを入れた。


やるべきことは、ここ天空闘技場の対戦者データシステムへのハッキング。


理由は至極簡単。


ターゲットと自分との組み合わせを確実にすること。


慣れた手つきでキーを打ち150階にいるターゲットの名前を確認して対戦者の名前を既定の者から自分の名前へと置き換える。


日時を確認すると今日の18:40となっていた。


パソコンの画面の右端にあるデジタル時計に目を向けると現在は18:00と表示されている。


現状として特に疲れているわけでもないし、特別もっと余裕を持たせたいという理由もあるわけでもない。


寧ろ、早く終わらせてしまいたいと思っているので日時には触れずにハッキングを終了した。


パソコンの電源を落とし、例の如くまた念を使って仕舞う。


傍から見れば手品で物を消してしまうのと変わらない。


ふと窓外に目をやる。


恐らく、もう暫くもすれば試合準備要請のアナウンスが流れるだろう。


視線を外から外し、ベンチから立ち上がり、闘技場の観客席へと足を運ぶ。


さして面白くも無い戦いを観るために。













『さぁ、注目の一戦!一階から一気にこの階までのし上がってきた、通称・破壊の女王!!
 一年前に200階クラスの戦闘をすっぽかしてから一度も現れることが無くそのまま登録抹消となってしまった彼女は
 この一年間、一体何をしていたのでしょうか!?今日、新たに再登録をしての参戦です。
 しかし、登録抹消になったとはいえ破壊の異名を持つ彼女のこと、恐らく今回も何かをしてくれるのは確実でしょう!
 その注目の一戦、間もなく試合開始です!!!』



そんな訳の分からない実況を聞きながらは額に青筋を浮かべていた。


「誰が破壊の女王だよ・・・」


ぶつくさ言いながらダルそうに片腕を腰に当てる。


ただ、一番言ってやりたい実況アナウンサーには一言も耳に入ることは無いが。


大きな闘技場の大きなリングのほぼ真ん中でと対戦者でありターゲットであるカーパスが対峙する。


そして、そんな何処から見ても実況の言葉にダルそうにしているリング上のを見つめる二人の子供。


丁度、修行と資金集めを目的に来ているゴンとキルアだ。


彼らがここに来た理由は数分前に遡る。







それは150階ロビーでファイトマネーの換金をした後、ウイングとズシの話を盗み聞いたキルアが口にした単語”レン”と”ネン”が何なのか知ろうとしたときのこと。


ゴンの提案でズシに直接聞きに行こうとした時だった。


不意に150階クラスの15分後に控えた試合の選手を呼び出すアナウンスが流れたのだ。


しかし、二人は特に気にせずエレベータのある方向へと足を向ける。


が、そのアナウンスはゴンとキルアの足を止めるだけの興味を引かせるには十分すぎるぐらいの情報を流した。


『カーパス選手、選手、153階闘技場まで起こし下さい』


「キルア」


ゴンがキルアに視線を向ける。


それにキルアも応えた。


「わからねぇ、でも可能性はある。取り合えず行ってみよう。それに、だったら”ネン”について何か知ってるかも知れねぇ」


「うん、行こう」


そうして二人は当初の予定を変更して153階の闘技場に向かうことになったのだった。


そして現在に至るわけである。


もしかすると、という二人の考えはまぁ、見事当たったわけであるがそのが対峙している相手のカーパスという選手はそれなりの使い手であるように思えた。


ゴンとキルアは知らないが、の相手は念の使える人間である。


だが、彼はファイトマネー目的でここにいる為200階には上らずにいるのだ。


まぁ、自分と同じような人間と闘って本気で負けたこともあったみたいだが・・・


カーパスが今はダルさの無くなった―だが腰は手においてある―に話しかける。


「破壊だか何だかしらねぇが、女のお前がこの俺に勝てるのかな?
 痛い目見る前に止めておけ、そんなひょろひょろの体じゃ何も出来ないぜ」


それには鼻で笑ってみせる。


「おしゃべりは勝ってからにしな。・・・ま、そんなことは絶対にねぇがな」


「あぁ!?」


「両者準備は宜しいですか?」


審判がとカーパスに声をかける。


二人はそれぞれ承諾の言葉を発した。


「それでは、始め!」


その言葉と同時か、先ほどまでカーパスと向かい合っていたはいつの間にか背を向けていた。


そして、その背後で崩れ落ちるカーパス。


それを包むかのように広がる赤の水溜り。


突然すぎて、この闘技場にいる者は何が起きたのか誰一人理解できていない。


それを見ていたゴン、キルアもまた同じだ。


今までの喧騒が嘘のように沈黙が闘技場を包む。


暫くして、その沈黙を破ったのはだった。


「審判、判定は?」


それに我に返る審判。


そして、高らかと手を上げて判定を下した。


「カーパス選手K.O!勝者、選手!!」


それを確認しては出入り口に向けて歩き出す。


後ろで審判が担架を要請する声が聞こえた。


その声でか、兎も角、本当に漸く実況のアナウンサーが我に返りマイクを手にする。


『なんと!選手、正に光のような速さでカーパス選手を見事K.O!一体何が起きたのか私にはさっぱり分かりません!
 しかし、選手これで150階はクリア!明日からは160階で活躍していただきましょう!』



出入り口通路の丁度半ばくらいで、そうアナウンスが言い終えるのを聞いた。












「それではまたのご利用をお待ちしております」


言っては携帯の通話ボタンを切る。


相手は依頼主。


内容はターゲットを始末したことと入金の確認。


不意にそれと同時か、遠くの方から自分の名を呼ぶ声を聞いて踵を返す。


ロビーの隅の人通りの少ない通路から身を引いて。








ロビーの奥の通りの角から出てきた人物を見て今まで声を張り上げて人探しをしていたゴンとキルアはその下に駆け寄る。


その人物――は二人を確認するとやっぱり、と思いつつ、何故、彼らがここにいるのだろうという、もっともらしい疑問を抱いた。


ゴンとキルアが走ってきていたので、はあまり移動することなく、彼らと壁際で対峙する。


ゴンが口を開いた。





「よぉ、久しぶりだな、ゴン、キルア。元気そうで何より。ところで…」





再びゴンがの言葉を遮って口を開く。


それには何だ?と聞き返した。


「さっきの戦闘、相手の人…殺したの?」


どこか寂しげに聞く。


は見ていたのならば聞くまでも無いだろうなどと思いつつ、彼の性分では人の命を奪うということはやはり好ましいことではないのだろうと思った。


特に、彼が”友”として認識している人間には強く思うのだろうと。


その裏にもまだいろいろな思いがあるのだろうが、とりあえず、聞き返す。


「見てたのか?」


無意識の無表情。


ゴンの横でキルアは二人のやり取りをただ見守る。


「うん。…ねぇ、どうして殺したの?無関係の人なんでしょ?殺す必要は無かったんじゃないの?」


どこか責めるようなゴンの瞳。


は真っ直ぐその瞳を見つめ返す。


そして、口を開こうとしたとき、今まで黙って聞いていたキルアが言葉を発した。


「ゴン、に直接的な関係は無いかもしれないけど間接的な関係は少なくともあるぜ、多分」


それにゴンが首を傾げる。


キルアが気持ち肩を落とした。


「お前、教えてもらったんだろ?本人に。つまり…」


そこで一呼吸置いてを振り向く。


、仕事だろ?」


「ご名答。詳しいことは言えないが、ヤツは依頼主の家族や他の人間を強盗、強姦目的で襲って殺してた犯罪者だ」


それを聞いて一転ゴンの表情が動いた。


「そっか、は仕事していたんだっけ。…ごめんなさい」


頭を下げるゴン。


それには少し吃驚する。


「ゴンが謝ることじゃねぇだろ。殺人って言う点では私もさして変わらねぇし」


それに一層、気落ちさせるゴン。


「そんな暗くなんなって、ほら、もっと明るく行こうぜ!」


「うん」


まだ何処か暗いゴン。


横で密かに呆れていたりするキルア。


は取り合えず、話題転換のために最初抱いた疑問を口にすることにした。


「そういえば、お前ら何しにここに来たんだ?小遣い稼ぎか?」


その疑問にキルアが答える。


「まぁ、そんなところだな。修行も兼ねてるけど」


「修行?」


「ああ、ゴンがヒソカに顔面パンチのおまけ付きでプレートを返すってんで修行に来たんだ。んで、今はその最中って訳」


「ふ〜ん、大変だな。それで、その修行は捗ってるのか?」


腕を組みながらが問う。


「全然。…でも、気になってることがあってさ、、ネンって知ってるか?」


「ネン?あぁ、ネンって念のことだろ?知ってるぜ」


は小首をかしげて、さも意外そうに言う。


それにキルア、そしてゴンまでも食いついてきた。


「「本当!?」」


「(おお、ゴン回復)」


そんなことを思いつつさらっと聞く。


「あぁ、本当。それで、それがどうかしたのか?」


「それ何なのか教えてくれよ!俺達に!」


珍しく感情的に聞いてくるキルアにはさして反応するわけでもなく暫く視線を宙にめぐらした。


そして、そのままの状態で口を開く。


「別に構わねぇけど…」


「けど、なんだよ」


「ん、面倒臭ぇ」


そう一言すっぱり言い切ったにゴンとキルアが一瞬固まる。


しかし、即座にキルアが抗議した。


「何だよ、それ!教えろよ!!ヒソカや兄貴だってそのネンってやつ知ってんだろ!?」


今までキルアの言葉を耳に指を突っ込むことで聴かぬふりをしていたは仕方なしにキルアに、基、二人に向き直る。


そして、ダルそうに話し始めた。


「へぇへぇ、分かりましたよ。教えてやるから、よ〜く耳の穴かっぽじって聞け。
 いいか?念って言うのは纏・絶・練・発ってぇのから成っていてだな、この四つを念の四大行っつーんだ。
 纏を覚え、絶を知り、練を経て、発に至る・・・だったかな?まぁ、そんなところだ、念ってヤツは。C'est compris?」


今まで疑問符を浮かべながら聞いていた二人だが、キルアが我に返り叫ぶ。


「わかんねぇよ!もっと分かりやすく説明できねぇのか!?」


その言葉にはさも心外だというように顔を顰めて見せた。


「あぁ?十分分かりやすい説明だと思うがねぇ・・・



プルルルルル、プルルルルル



不意に言葉を遮っての携帯が鳴る。


は携帯を取り出して画面を確認した。


そこにはクロロの文字。


「悪ぃ、知り合いから電話だ。まぁ、念のことは他のやつに聞いてくれ!こいつ無視するとしつこいんだよ。じゃ、また後でな!」


そう言って人気の無い場所へ走っていってしまったの後姿をゴンとキルアはただ無言で見送った。


暫くしてゴンが口を開く。


「いっちゃったね」


「ったく、訳のわかんねぇ説明だけ残して行くなっつーの!
 はぁ、やっぱりズシのところに行くしかないな・・・あいつの方のがまだマシな説明をしてくれそうだし、取り合えず、行こうぜゴン」


「うん、そうだね」


「その後またに会いに行くっつーことで」


「うん」


そう言って二人は再びエレベーターへと向かった。


とさして変わらぬ説明をズシがするということも知らずに。


そして、本日三度目の訳分からない宣言をキルアがすることになるがそれはこれから数分後の話。







  ←back|next→







いやっはー!長くなってしもた・・・一話増えるよ;
何てことなのかしら(-_-)
そして、全然背景のつかめない話ですみません。
私には無理です、限界が・・・(逝ってよし☆
あ、ちなみに、文の中で出てきた妙な仏語は英語で言うところの
do you understand?と同じです(日本語で書けよ
読みは、セ・コンプリーズですな。



読まない方閉じてください。
































【お買い物なら楽天市場!】 【話題の商品がなんでも揃う!】 【無料掲示板&ブログ】 【レンタルサーバー】
【AT-LINK 専用サーバ・サービス】 【ディックの30日間無利息キャッシング】 【1日5分の英会話】