「受験番号1番の方」
第十二話 最終試験
飛行船に乗り込んでから暫く、放送が流れてきた。
説明によると、会長ネテロが、一人一人面接を行うそうだ。
それで、1番のがまず、呼ばれたというわけで。
は、放送の説明に倣って、二階の第一応接室まで来た。
そして、扉を開く。
そこは和室で、ネテロが胡坐をかいて座っていた。
「まぁ、そこに座りんしゃい」
「はいはい」
がネテロにすすめられるまま畳に胡坐をかく。
「まず、この試験を受けた理由は?」
「・・・母さんに勝手に申し込み用紙を送られたから」
「試験の方はどうじゃ?」
不敵な笑みを浮かべながら言うネテロには眉根を寄せる。
「つまらん。簡単すぎる。最終試験はもう少し面白げのあることしてくれよ」
「ほっほっほ。考えておこうかの。では、次の質問じゃ。おぬし以外の9人の中で今、一番注目しているのは?」
「405番だな。あと99番。どちらもこの先どうなるのかがとても気になるな」
「ほう、では今、一番戦いたくないのは?」
「405番と44番。今はって言うのを強調するなら44番だな」
「ふむふむ」
言ってネテロが何か書いているようだったが、は無視して和室をぐるりと見回した。
「行って良いぞ」
いつにもまして不敵な笑みを浮かべるネテロには嫌なものを感じつつ部屋を後にした。
飛行船が試験会場となるホテルについてからまだ暫くも経っていない。
広い部屋で今、最終試験の説明を受けるところだ。
今までの試験官たちも顔をそろえている。
ネテロが前に出た。
「最終試験は1対1のトーナメント形式で行う。組み合わせはこうじゃ」
そう言って、ネテロは近くに用意してあったボードにかかる布を引いた。
そこに現れたのは正しく、トーナメント表。
はその組み合わせを見て顔を引きつらせた。
ゴンとレオリオが声を上げて、を見る。
「・・・」
「、お前一戦目からヒソカとじゃねぇか!?」
「・・・そうだな」
肩をがっくし落としてはネテロを見やった。
その視線に気づいてネテロは人の悪い笑みを浮かべた。
「(くっそ、あのじじぃ、確かに退屈はしねぇかも知れねぇが・・・最悪だ)」
そう思いながらが顔を横にやるとヒソカと目が合った。
ヒソカは笑みを浮かべている。
本格的には頭を抱えるのだった。
「さて、最終試験のクリア条件はたった一勝で合格である。すなわち、このトーナメント表は負けたものが上へ上がっていき、勝った者が次々抜けていくシステム。
どうじゃ、わかりやすいじゃろうて」
それから数名が質問していたが、はそんなことは耳に入らず、兎も角頭を抱えまくっていた。
「(夢見悪そう・・・・・・)」
そんなことを思っているといつの間にか選手コールが始まっていた。
「第一試合、対ヒソカ!!両者前へ!」
呼ばれてとヒソカが前へ出る。
「頑張って!!」
「ああ」
ゴンの呼びかけに引きつりながら答える。
ゴンの近くに居たレオリオが思わず
「大丈夫かよ、あいつ」
ともらしたのは言うまでも無い。
部屋のほぼ中央で向き合う、ヒソカの二人。
二人の丁度、分割線あたりでグラサンをかけた試験官が二人を窺う。
「両者よろしいですか?」
ヒソカはそれに笑みを浮かべ、は静かに頷く。
「それでは・・・始め!!」
言って、試合が開始される。
がツカツカと平然としながら歩いて、ヒソカとの間合いを徐々に詰めていく。
試験官もゴンたち受験生もただそれを見守る。
「大胆だねぇ、」
「それはどうかな」
言って、は不意に放ったヒソカのトランプを易々とよけると、次の瞬間にはヒソカの真後ろにいた。
「「「「「!」」」」」
試験官もゴンたちも自分の目を見張ったが、ヒソカとネテロだけは口元に薄く笑みを浮かべていた。
イルミは始終無反応だったが。
がヒソカの顔面に向けて右拳を放つ。
ヒソカはそれを紙一重でよけ、間合いを取った。
すかさず、がまたその間合いをつめ、右足から蹴りを繰り出す。
ヒソカがそれを左腕でガードするが、たまらず右側へ吹っ飛ぶ。
ヒソカが体勢を持ち直したのと同時くらいに、の首に巻いていたスカーフがはらりと落ちた。
ヒソカのいつの間にやらの攻撃でスカーフごと首の薄皮一枚が切れたようで一筋、血が流れた。
その傷の下にはもうひとつ、大きな古傷が見える。
それは多少抉られたような感じの跡を残し、少し脹らみを持ちながら頚動脈を通って後ろから前にかけ斜めに10pほど入っていた。
は小さく舌打ちしてヒソカに向き直る。
「へぇ、そんな傷もあったんだ◆戦闘で付いた傷かな?」
不敵な笑みを浮かべて言うヒソカには静かに睨み付ける。
「そんな大それたもんじゃないさ」
それを見ていたレオリオが誰とも無くもらす。
「あいつ、いつの間にあんな傷を・・・」
「何か・・・分けがありそうだな」
クラピカがそれに相槌を打つ。
とヒソカは未だ対峙したままだったが不意にヒソカが口を開いた。
「ふ〜んそれじゃ、お友達でも助けたのかな?」
の体が一瞬びくりと動くと顔を上げた瞬間には左目が蒼に変わっていた。
ヒソカはそれに笑みを浮かべる。
ゴンたちはそれに驚く。
は真っ直ぐに走っていくと、ヒソカの目前で消えた。
そして、ヒソカが後ろを振り向くと、その下にいたが両腕を軸にして両足でヒソカの下あごを蹴り上げる。
後ろに退くヒソカ。
すかさず、がヒソカの鳩尾に両の手のひらで衝撃を与えた。
ヒソカは鳩尾をおさえていたがはそこから間合いを取って、数メートルのところでヒソカと対峙する形を取る。
その頃にはもうの瞳の色は治まっていた。
これら一連の動作は瞬間的なものでネテロは髭を扱きながら笑みを浮かべた。
他の人間はただただ驚愕するしかない。
鳩尾を押さえていたヒソカは顔を上げると口を押さえて笑った。
そうしてを睨む。
「、なぜ本気を出さない?」
は大きな溜息をついて腰に手を当てた。
「試験中はもうお前とは殺り合わないと言ったのを忘れたのか?少なくとも、この試験が終わるまでは本気でやるきはないな」
「ククク」
言ってヒソカがトランプを瞬速で投げる。
「くどい!」
ヒソカの攻撃を紙一重で避けたは自分の髪を纏め上げている櫛二本を右手で取るとそれをヒソカの右肩と手の甲に投げた。
手の甲に投げたそれは手を貫通したが。
これらの動作0.5秒。
一瞬のことでゴンやレオリオはぱちくりしていたが、その場に居た殆どがびっくりして目を点にしていた。
「・・・それじゃ、仕方ないね・・・・ボクの負けでいいや◆」
呆けていた試験官がはっとする。
「第一試合、勝者、!」
ヒソカが、腰に右手を当てて立っているに傷口から抜いた櫛二本を攻撃するように投げる。
「返すよ、ソレ」
はそれを左手の人差し指と中指、中指と薬指でそれぞれ受け取った。
「お前の血が付いたものなんかいらねぇし」
言って、右手で後ろ髪を掻き揚げると左指に力を込めてその二本の櫛を真っ二つに折った。
パキンと軽快な音を立てて金属製のそれはの左手の中で四本になる。
ヒソカは”ククク”と笑いながら受験生達がいる壁際へといった。
は床に落ちてしまった赤いスカーフを拾ってゴンたちの下へ歩いた。
そのままレオリオの横を通ると、手にしている折れた櫛を壁際に投げ捨てる。
そして、切れたスカーフを一度解きなおして広げると、それで背に流れている髪を高い位置でひとつに束ねた。
太股まである長い髪だから意味が無いと思うが。
「すごいよ、!合格おめでとう!」
ゴンがまず口を開いた。
はゴンを振り向いて満面の笑顔で返す。
「おう、ありがとな!ゴン」
言ってゴンの頭をぐりぐりと撫で回す。
「おい、、傷見せろ」
レオリオがの左肩に手をのせる。
「大したこと無ぇよ、こんなの」
顔だけレオリオに向ける。
「んな、お前なぁ、首切ってんだぞ!?ほら見せろ!」
「はいはい」
そう言ってはおとなしくレオリオに傷を見せた。
古傷を見られるという点で不本意であったけれど。
「・・・血はもう止まってんな。とりあえず、消毒しとくぜ」
「好きにしろ」
レオリオは自分のケースを開けて中から消毒液を出すとの傷口に薄くのばした。
「よし!これでいいだろ」
「・・・・・・」
「なんだ?」
「なんでも」
はそう言って肩をすくめた。
第一試合の試験官と交代で別の試験官が会場中央付近に立つ。
「それでは、第二試合、ゴン対ハンゾー前へ!」
「頑張れよ、ゴン。あ、程々にな」
「うん!」
の声掛けにゴンが相槌を打つ。
ハンゾーとゴンが対峙する。
「わたし立会人を務めさせていただきますマスタと申します、よろしく」
「よぉ、久しぶりだな」
ハンゾーが声をかけた。
ゴンは頭に?マークを浮かべている。
そしてそれから暫くハンゾーのマシンガントークが始まり、やっとのことで試合が始まると、間もなくゴンがハンゾーに一方的にやられ始めた。
三時間、一方的にゴンがやられている。
横に居るレオリオはこの状況に耐え切れないのか、ブチ切れ寸前、というか、切れている。
叫ぶレオリオをは右袖を引っ張って制す。
そんな折、ゴンがハンゾーに後ろ手に押さえつけられた。
「腕を折る!言っちまえ、まいったと」
ゴンは歯を食いしばりながら叫んだ。
「いやだ!」
ハンゾーの表情が一瞬変わったかと思うと、次の瞬間には鈍くも響く音を立ててゴンの左腕を折った。
それには場にいた9割が目を見張った。
はその中には含まれなかったが・・・
「さぁ、これで左腕は使い物にならねぇ」
真横でレオリオが歯軋りするのが聞こえる。
「、クラピカ止めるなよ。これ以上あいつが何かやったら、ゴンには悪いが抑えきれねぇ」
「恐らくそれはねぇな。かと言って、わたし自身が動くことも無いけどな」
そう言って腕を組んだをレオリオが振り向く。
平然と言っていただったがその左目は確かに蒼に、ヒソカ戦とは明らかに違うとわかるほど、濃い蒼に変わっていた。
その光に思わずレオリオは生唾を飲み込んだ。
「痛みでそれどころじゃないと思うが聞きな」
言ってハンゾーは逆立ちを始めながら何か長々と説明し始めた。
どこか自慢げである。
それから長々十数秒後いきなりその会話は途絶えた。
即ち、ゴンがハンゾーに蹴りを入れたのだ。
一気に場の空気が緩む。
レオリオにいたっては
「よっしゃぁああ、ゴン!行け!!蹴りまくれ!!蹴り殺すのだぁ、殺せぇ〜〜!!」
などと横で叫んでいる。
すかさずそれに突っ込むクラピカには陰ながら噴出した。
ハンゾーが起き上がったがかなりダメージを食らっているようで・・・心なしか涙目だ。
しかも、鼻血。
は再び噴出すのを堪える。
ハンゾーが話すのも聞こえず、にしては暫く堪えていた。
だが、とどめのゴンの言葉が・・・
「それは困る!!脚を切られちゃうのはイヤだ!でも降参するのもイヤだ!だからもっと他の方法で戦おう!!」
「ぷふっ、あはははははははははははははははははは!!!駄目、もう堪え切れん!ゴンそれマジ笑えるし!
つーか、ハンゾーの顔!あはははははは!!腹、痛ぇ!!あははははははは・・ゲホゲホ」
ゴンの言葉と加えての馬鹿笑いに場の空気が先ほどよりも数倍緩んでしまった。
他の受験生や試験官たちも笑っている。
あのヒソカまで・・・
「う゛〜〜、笑いすぎだよ!」
ゴンが言う。
「そうだ!、お前少し黙ってろ!!」
ハンゾーも怒鳴る。
「や、それはちょっと無理、あははははは、う、ゲホゲホ」
クラピカが思わずの背中をさすった。
その間にゴンとハンゾーの方は話が進む。
そうして、畢竟ゴンの勝ちで第二試合は幕を閉じた。
勝った本人は床の上で伸びているが。
はと言うと、未だ余韻の残る気管に咽つつクラピカに背中をさすられていた・・・・
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無駄に長いし無理矢理終わらせた節が・・・・
つか、なんかいろいろ不憫・・。
いろいろ不明・・・
では。
閉じてください
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