晴れ渡る空



雲ひとつ無い晴天晴れ



青い、青い果て無き世界





















鍛錬場から程遠くない場所にある宮城はやはり、間近で見れば見るほど立派だった。

大きな門、その後ろから見える大きな、高い楼閣。

端の見えない城壁。

その外見から宮内はどうなっているのだろうと、少なからずに興味を持たせた。

門前に立ち、門番に名を名乗ると、事前に曹操から言われていたのだろう、特に拒む様子もなくすんなり入れてもらえた。

それから大きな宮城の敷地内を真っ直ぐ進み目前の階段を登ると宮内に入るための門の前にまた門番がいた。

二、三詰問をされたので答えると、案内役の臣官がやってきた。

そして、その後をついて行くように言われ、それに従う。

大きな大きな城の内部は複雑な造りで通路がいたるところで交わっていた。

吹き抜けになっているその通路には鮮やかな朱塗りの柱によってその屋根が支えられていた。

そして、対照的な蒼や緑や黄の塗料で細かな彩色や陶器での装飾が施され、ところどころ透かし彫りで模様が刻まれているものもあった。

恐ろしく繊細で、美しく、華やかなそれらにまるで、別の世界に来たかのような錯覚を起こさせられた。

どのくらい奥へ進んだのだろうか、ある一室で臣官は止まると中へ声を掛けた。

「丞相、お連れ致しました」

「通せ」

中から短い返事がする。

臣官は扉を開けると、自身は扉の横へ侍し中へ入るように促した。

「失礼致します」

一言述べて入室する。

が入室したことを確認すると、臣官は扉を閉めその場を後にして行った。

室内は特に変わったものはなく、簡素だった。

中央、一段高くなった台の上にある椅子に曹操が座り、その段の下、曹操の横に夏侯惇が侍していた。

彼らの後方には窓がある。

開けっ放しのその窓からは、その後ろに広がる池のある庭が見えていた。

華美過ぎでも、また、質素すぎるものでもなく程よくまとめられたその庭は、詩人・曹操の持つ庭として頷けるような、そんな庭だった。

曹操の前に叩頭する。

すると、間もなくして頭上から声がした。

「面を上げよ、呼んだのはわしだ、そう堅苦しくせずとも良い」

言われ、それにならって顔を上げる。

椅子に座る曹操と目が合う。

横に侍る夏侯惇が視界に入る。

手をついたまま顔を上げるとは口を開いた。

「先刻は拙との手合わせ有難う存じ上げます」

「良い、手合わせを請うたのはわしらだ、寧ろその礼はわしらがそなたに言うものであろう、なぁ、元譲」

曹操がそう振ると、腕を組んで立っていた夏侯惇は頷いた。

「ああ、孟徳の言う通りだ、何せ突然そなたに請うたのだからな」

はその言を聞くと、恐縮ですとの意味を込めて礼をとった。

そして、互いに字で呼び捨てあう彼らのことを本当に世に言うような仲であるのだと、一つも違わぬことなのだと、そう思った。

「礼はいらぬと言っておろうに、真、そなたは堅苦しいのう」

「お前が軽いだけだ、孟徳」

曹操はそれに少し顔を顰めて夏侯惇を見やった。

本気で気分を害したわけでなく、日常茶飯事である行為なのだが…

そんなやりとりをは無言で見つめる。

曹操が口を開いた。

「失礼した、まぁ、気にするな。して、そなたなぜ此処に呼び出されたかはわかるか」

きかれて、は友人・李乾が言っていたことを思い出したが、あまりに出来すぎた話だと思っていたので敢えてそれは伏した。

「いえ、わかりかねます」

それをきいた曹操は意外そうな顔をした。

「そうか…そなた、といったな、はいつ我が軍の兵となった」

顎鬚をしごきながら聞く曹操の目から視線を変えずに答える。

「は、二週間ほど前で御座います」

曹操は”ほう”と興味を示した。

「まだ日も浅いな、それでの名を耳にしなかったわけだな。ふむ、わかった」

そこで一呼吸置くと、顎に添えていた手を下ろして腕を組み、右足を左足に乗せて組んだ。

「…して、、そなたは何故、兵として仕官した?理由を聞かせてもらいたい」

今までの柔らかだった瞳と打って変わって、そこには覇者たる瞳があった。

それに答えるように、はその場になおる。

「は、恐れながら述べさせていただきます。拙には母と幼い弟がおります。父は、10年前になくなり、それ以来、拙が家を切り盛ってまいりました。
 しかし、生活は苦しいままで、なかなか二人に楽をさせてやることが出来ません、しかも、世は乱世、いつ戦に巻き込まれるかも分からないのが現状で御座います。
 丁度そんな時、近所の者が”兵士として仕官するとなかなかの配給がある”と聞き、またこの乱世を一日でも早く終わらせることが出来るならばと非力ではありますが仕官した所存で御座います。」

無言で聞いていた曹操は、それが終わると大きく頷き立ち上がった。

「理解した、そなたの言うことに一理ある。また、此処へ呼んだ理由は一つである、そなたが我が護衛役として良いか否かを問うた。
 結果、そなたを我が護衛として迎え入れる、以後、親衛として仕えよ」

はそれを聞いて深々と頭を下げる。

「はっ、この謹んでその任承らせていただきます」

「うむ」

曹操はそう言って満足そうに顎鬚をしごいた。

夏侯惇もその横に侍りながら一つうなずいた。

「では、、今日よりそなたはこの宮殿内の部屋で過ごして貰う。まず、部屋へ案内しよう。誰か居らぬか!?」

曹操が声を張り上げると部屋の外に誰か来た様だ。

「は、殿。お呼びで御座いますか?」

「ここに居る、を親衛用の部屋へ案内せよ」

「畏まりました」

曹操はに行くように促すと、は拱手してその場を後にした。




今、を案内しているのはこの宮に使える臣官で、応倫というそうだ。

「(ここに住むとなると場所を覚えるのが大変そうだな・・・)」

がそんなことを思っているとどうやら目的の場所に着いたようで、部屋に入るように促された。

一礼して入室するとそこには7人の先客が居た。

「君が新しく任命された人かい?わたしはこの親衛隊の隊長の曹演と申します」

そう言って人のいい笑みを浮かべると、他の6人も続いて自己紹介をしていった。

「某はと申します。以後よろしくお願いいたす、曹演殿」

「ははは、呼び捨てでよい、敬語も使うな。気楽に行こう」

そう言って曹演はの方をぽんぽんと叩いた。

そして、その後捕りとめもない話をし、個室がそれぞれあるのだと聞かされて、そこにまた案内された。





夜、個室では窓から見える月を胡坐をかいて見ていた。

「(明日から一層技に磨きをかけないとな。一度も戦場を経験することなくこんな地位に来るとは思っていなかった。
  命を落としたら、母様や鼎は生活できなくなってしまう。そんなことは絶対にあっちゃいけない・・・・!)」

そう思いを馳せては床に入った。







モドル|ツギヘ







久々更新、発展ならず(オイ
ご、ご、ごめんなさい;次は・・・どうだろ(殴
頑張ります


2004/06/05

閉じてください

























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