「場所は押さえてあるからあとは行くだけだよな、忘れ物もないっと」











    第一話    その脚力で











「んじゃ、行って来る〜」


そう言っては玄関から叫んだ。


「さっさと行ってさっさと帰ってきなさいよ、母さんが暇だから」


「はいはい」


そう母、マリーナが話すと、今度は父、ロードが声をかけてきた。


「無駄に他人を殺ってくるなよ」


「・・・・了解っす」


「その間は何だ?」


「何でもないです・・・・改めて行って来ます!」


は勢いよく扉の外へ出て行った。


半ば逃げるように。





家から飛び出し、取り敢えず向かう先はこの国フェンミナの入り口でもある出口。


ちょっと遠いので早歩きで先を急ぐ。


今歩いているこの大通りを真っ直ぐ進めばつく。



「あ、様よ」


「どこかにお出かけかしら?」


「きゃぁー、様こっち向いてーー!」


「あっ、ちょっと、あなた様はわたしのものよ」


「何よ、様は私のよ!」


「なんですってぇーーー」


「何よ」


   ワイワイ、ギャーギャー



について何やら始める娘達。


何人って?


そりゃもう、数え切れないぐらい。


そう、この国は女だけの国。


当然、女同士で恋愛して結婚までする。


子供はと言うと、どっからか連れさらってきた男を使う。


使ったら用無しなので殺される。


または奴隷。


そんな、なんとも恐ろしい国で現在一番注目されているのが、そう、何を隠そうなのだ。


は性格が男前。


容姿は男前とはいかないが綺麗な方だ。


身長も女にしては高い、173もある。


ま、いいとして、はこの状況がとても嫌いである。


はっきり言ってなぜこんなに騒ぎ立てないといけないのか理解不能だ。


何より、五月蝿いしウザイ。


毎回ここを通っているときと同じく、顔を顰めながら先を急ぐ。


長い黒のロングコートのような上着をなびかせてツカツカと進む。


「あ、あの・・・!」


いきなり声をかけられた。


振り向くと茶色の巻き毛を風に揺らした可愛いという言葉がよく似合うそんな娘が友人なのか二人の娘に押されるようにそこに居た。


手には何か持っている。


「こ、これを受け取ってください・・・・!」


そう言って差し出したのはオニキスをはめ込んだシルバーの繊細な指輪。


この指輪はここ、フェンミナでは求婚の意味を持つ。


そして、それは自分の”夫”となるべき人に贈られるものだ。


”妻”にはガーネットをはめたゴールドの指輪を送る。


指輪は一人につきそれら一組を持つ。


そして、自分は相手とは別の指輪を取るのだ。


余った指輪は子に受け継がれることになっている。


は気づかれない程度にため息をついた。


そして、自分よりも顔一個分ぐらい違う娘を見下しながら言う。


「そういう大切なもんはもっと大切な人に渡しな。わたしなんかに渡すもんじゃない」


じゃあな、とは告げて歩き出す。


巻き毛の娘とその後ろに居た二人の娘、それに他にも沢山いる娘達は一様に頬を染めて手を胸に当てる。


   (((((((((なんて気の利いた言葉、素敵・・・・・)))))))))


などと思いながらまた一層、胸に秘めた。


そんなことを露とも知らないはただ先へ進む。


ついでに言えば、気を利かせた覚えはない。


あれが素だ。


しかも、彼女としてはかなり冷たく言い放っている。


いや、そのままだ。


ここの国の娘達は皆、外の人間よりも感覚が一風変わっているのでそう思ってしまうのも無理はないが。


まぁ、いいとして、兎も角はだだっ広い大通りを行く。


肩から小さめで黒いショルダーバックをぶら下げて。


暫く行くと大きな木が見えてくる。


ここまでくれば、出口までは数百メートルだ。





また名前を呼ばれた。


今度は前方からで、その問題の木がある方向からだ。


すると、ひょっこりと如何にも元気が取り柄ですというような少女がシャギーの入ったショートカットの黒髪を揺らして顔だけ出した。


「ルチア!何してる?そんなところで」


ルチアと呼ばれたその少女はトテトテとのもとへ走ってきた。


「えへへ、今日が出かけるって、のお母さんから聞いてね、ここで待ってたんだ」


そう言って笑顔を作った。


「そうだったのか」


「うん!それで、ハイ、これ!にあげる!プレゼントだよ」


そう言って差し出したルチアの手には月の石と呼ばれる玉がはめられた透かし彫りが綺麗なシルバーのアンティーク調なピンキーリングがあった。


「ん?この石、探したのか?」


「うん、前から欲しがってたでしょ?デザインはわたしがしたからどうかなって思うんだけど・・・・」


上目遣いで見てくるルチアには笑って指輪を受け取る。


「嬉しいよ、ルチアが考えるデザインは好きだし。怪我はしなかったか?凄い絶壁だっただろあそこ」


あそことは、月の石があった場所のことだ。


月の石は、三日月や満月など、その時々に石の色が変わる。


とても不思議な石で好事家なら誰もが欲しがるようなそんな石だ。


しかし、その石は見つけにくい上に必ず絶壁にある。


おまけに、いろいろな条件付だった。


「大丈夫、大丈夫。全然ヘーキ!」


「そっか、なら良し!んじゃ、わたしはそろそろ行くわ」


「うん、いってらっしゃい」


「おうよ」


は右の小指にリングをはめる。


そして、ルチアがするように、その手で手を振った。


出口を目指して。










門を出て、暫く歩くとは立ち止まってストレッチを始めた。


「さて、そろそろ本番」


そう言って手首と足首を十分ほぐすとあたりに落ちている影ををぐるっと見回した。


「えっ〜〜と、そろそろ昼かな?こっからザバン市だと遅くて二時間ぐらいだな・・・ペース速めに行くか」


地に両手の指先と右足をつくと、クラウチングスタートのような感じで身構える。


そして、一呼吸すると足にオーラを集中させた。


瞬間、もうそこにの姿はなかった。


残されたのは、深く抉られた土に残るの足跡だけ。












鬱蒼と茂る木々をかわしながらは走る。


その速さは尋常ではない。


通った後には一陣の風だけが残される。



”ざっ”と音を立て森の向こう側にある海岸で足を止める。


「・・・・・海か、面倒だ。このまま行く」


そう言って、目を見開くとまた消えた。


そして有り得ないことが起きている。


は今、水面を颯爽と走行中。


無論、姿は見えない。


規則的に水面に波紋が広がるだけだ。


途中、船と行き違ったが、そのデッキで風景を楽しんでいた一般人はなんだろうといった風に波紋を見るだけだった。











「到着」


海を走り、港を通り抜け、山を一つ越えてザバン市についた。


かかった時間、およそ一時間弱。


人じゃない。


はザバン市の街門をくぐるとツバシ2-5-10をめざして歩いた。


「(あった、あった、ツバシ2-5-10の定食屋)」


そう思いながら、とりあえず中に入る。


「いらっしぇーい、ご注文は?」


「(普通すぎる・・・・・)ステーキ定食な」


オヤジがピクッと眉を上げる。


「焼き方は?」


「(うっわ、微妙)弱火でじっくり・・・・あ、ついでに七人前な」


そうは言うと二カッと笑った。


オヤジは?マークを浮かべながらもを奥の部屋へ行くように指示した。







「まじで普通すぎる」


そう言って、用意された席に着くと、ぐるっと部屋を見回す。


「ほぉ、部屋全体がエレベーターか。考えたな、会長も・・・・・・とりあえず、食おう。腹減った」


そして、は凄い速さで食べ始めた。


ステーキ定食七人前を・・・・。


見かけによらず大食らいなさん、お腹壊さないように。






丁度七人前を平らげた頃、”チンッ”と音を立ててエレベーターのドアが開いた。


「あぁ〜ちょっと頼みすぎたかと思ったがまだいけるな」


そんなことを言いながら扉をくぐって外に出る。


・・・・あんたは化け物ですか


はぐるっと見回して場所の確認をした。


誰も居ない、暗闇の空間。


たしか、エレベーターから出る前に扉上部の表示を見たら”B100”となっていた。


ということは、ここは地下100階。


そんなことを思っていると、声をかけられた。


「はい、これ番号札です」


「おう」


言って受け取るとそこには”1”の文字。


「ねぇ、これ1って書いてあるみたいだが、それはわたしが一番にここに来たってことか?」


「はい、そうです」


そうちっこい会長秘書は言った。


そして、何処へともなく立ち去る。


それを見届けてはプレートを左胸に付けた。


「(・・・・暇だな。とりあえず腹八分目になったことだし・・・・・・運動するか!)よし!!」


そう何かを決心するとは・・・・・



腕立てをはじめたのだった・・・・・・・。











 
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また無駄に長くてごめんなさい;管理人の隷です。
はじめちゃいました、また連載。
しかもこっちはギャグ風味で;
微妙な表現とかは目瞑ってやってください;
それから、こちらの連載はオリキャラたちがでしゃばる可能性が大です;
ついでに言うと、例の如く、ヒソカとかイルミとの絡みが多くなるかもです
もう一つついでに、これは同姓恋愛の話じゃありません、そういう表現もしませんので念のため念頭に入れて置いてください(何か変
そんなわけでよろしくしてやって下さい。
では。

































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