長閑な時間
束の間の静
青き空は白き雲を抱いて
降り注ぐ光は大地を抱いて
そよぐ風は人を抱いて
突然の使者 2
荊州宮城の中庭の一角。
少し小さめの池に少し大きめの岩。
その先に青々と茂る立木。
それを岩に軽く腰掛けて見つめる娘とも青年ともつかない者。
空の青と木葉の青。
同じ”あお”なのに違う”あお”。
目を細めてその違いを良く見る。
そして辺りを見回す。
ここは”あお”の溢れた林泉だなと思いながら、ふと、ひょんなことで知人、同僚となってしまった男のことを思い出す。
趙雲子龍――・・・そういえば、彼の纏っていた鎧もまた”あお”だったな、と。
天を仰いで目を瞑る。
光だけが、瞼を通して感じられた。
「もし、殿を見かけなかったか?」
「あ、これは趙将軍、関将軍、張将軍。
はい、奥の林泉の方でお見かけ致しましたが・・・」
「そうか、かたじけない」
「いいえ」
言って、趙雲に声をかけられたその文官は少し嬉しそうな顔をしながら”失礼します”とその場を後にして行った。
関羽がそれを見送ると張飛が前方にいる趙雲に言った。
「しかしよぉ、趙雲、本当にそのってやつぁできるのかぁ?
軍師殿の力はわかったが、昨日その軍師殿が推薦したって言うそいつは軍師殿の血縁でもない上に女だってぇ話じゃねぇか。
いくら軍師殿の推薦だからって、そんなやつぁ信用できねぇな」
林泉に向かい歩みながら言う張飛に、趙雲は振り向かずに話す。
「彼女はできますよ、きっと。目の前で見たんですから。」
「戦(や)っているところをか?」
「うーん、そんな大それたところではないですけどね。」
眉根をよせ、少し困惑した表情で趙雲は答える。
表情は後ろの二人には見えていないのだけれど。
「まぁ、翼徳、その辺にしておけ、趙雲がそう言うのだからそうに違いない。
どちらにせよ、今会ってみればわかることだ。」
そう言って関羽はその長い髭を扱(しご)いた。
漸く目的の場所へ三人はつくと、辺りを見回した。
最初に気づいたのは趙雲で、池の近くの岩に腰掛ける人影を見つけて3、40m先の回廊から叫ぶ。
今までずっと瞑想していたは、自分の名が呼ばれるのが聞こえて目を開いた。
声のしたほうをふと見ると、趙雲と偉丈夫というに相応しい二人の男が立っている。
彼らは回廊を抜け、こちらに向かっている様子だったので、自分も腰を上げてその元に向かった。
彼らとの距離は僅かに2mほど。
趙雲と諸葛亮でさえ8尺(183a)を超え大きいと思っていたのだが、この趙雲の後ろに控えている二人はそれよりも大きかった。
少し強面の赤い頭巾をかぶった彼は8尺3寸(187a)ほど、そしてその横に立っている長い髭が印象的な彼に至っては恐らく9尺(206a)を優に超えているだろう。
こんな巨漢がいたとは、と感心しながら、内心仕官することを強く推した諸葛亮に礼を言った。
趙雲が、関羽、張飛、の横に出ると口を開いた。
「殿、お二人に貴女のことを紹介したいのですが良いでしょうか?」
「構わない」
趙雲はそれを聞くと、再度口を開いた。
「関羽殿、張飛殿こちらが殿です」
手で示しながら説明をする。
は拱手して言った。
「と申します。お呼びになる際は如何様にも」
一呼吸おいて、今度は関羽と張飛を示して趙雲が口を開く。
「殿、こちらが関羽殿でこちらが張飛殿です」
「関雲長と申す」
言って関羽は横に目をやるとそこにいるのは呆然としている義弟。
肘で小突くとそのままの状態で口を開いた。
「あぁ、俺が張翼徳だぁ―・・・って!そうじゃねぇ、オイ趙雲!!」
呆然と明後日の方向を見ているかのように話していた張飛がいきなり趙雲に食って掛かる。
「これのどこが女なんだ!お前の目を節穴かってんだ、確かに名前は女かも知れねぇが、どう見ても男だ!
服装、仕草全部男じゃねぇか!」
困る趙雲。
そこに割ってはいる関羽。
「おい、翼徳!その変にしないか!!失礼だぞ!」
「んなこと言ったってよぉ、雲長兄ぃは女だって信じられるか!?」
「う・・・いや、まぁ・・・―――――」
詰まる関羽。
「ほれみろ、趙雲、今度から説明するときはなぁ、女じゃなくてかまだ!かま!!」
その言葉に一瞬顔を引きつらせる。
今まで黙って聞いていたが流石に頭にきたのか、しかしそれは極力顔には出さずに徐に二歩前へ出ると
「お二方、お手を失礼いたします」
と言って、関羽の右手と張飛の左手をつかみ、いきなり自身の胸に押し当てた。
「これでお分かりいただけたか?」
そう言って両の手を二人の手から下ろす。
それを見て固まる三人のうちの一人。
実際それを触っている二人に至っては寝耳に水で、挙句の果てそこにしっかり存在する感触を揉んでしまった。
「揉みませんように」
そう、さも他人事であるかのように落ち着き払って言うの言葉で我に返ったらしい関羽と張飛はすぐさま手を放した。
「いや、これは失礼致した」
「ああ、ぜ、前言撤回するぜ、すまねぇ」
関羽と張飛はそう言うと顔を赤らめながら頭を掻いた。
それに反してはそんなこと気にしていないとでも言うように平然として言う。
「いいえ、こちらこそ無礼を致しましたこと、深くお詫び申し上げる。
先ほどのことはお気になさらぬようにお願い申し上げたい。
・・・・・・して、特にこの先、用もなければこれで失礼させて頂きたいのだが・・・」
それに関羽が答える。
「あ、ああ、構わん」
それを聞いては拱手する。
「では、これにて失礼させて頂く」
言って踵を返すと回廊を歩いていった。
残された三人はまだどこかボケーっとしていた。
内一人は少々他の二人と理由が異なったが。
日も傾き暗くなり始めたころ、は家路についた(といってもその家は諸葛亮に与えられた屋敷なのだが)
まだ薄暗い程度なので足元はよく見える。
宮門から大通りに出て直ぐ、城壁沿いに左へ曲がる。
屋敷はそこを直進するだけで直ぐ左手の方に見えてくるが、なんせ城壁が長いものだからなかなかつかない。
しかし、ちょっとした考え事をしながら帰るときには丁度いい長さかなと、は少なからず気に入っていた。
何となく紫苑に染まる頭上を見上げながら歩く。
遠くの山際に目をやると、そちらの方はもう紫と言うより紺に近いぐらいの暗さになっていた。
今日は何か疲れたなぁ、などと思っていると後方からよく聞き慣れた声がした。
「」
その場に止まって振り向くと、案の定そこには諸葛亮が立っていた。
しかし、どうしたことか肩で息をして、しかも、少ししかめっ面である。
何事だろうと思いながら、は向き直っていった。
「亮兄様・・・?なぜ肩で息をしているのです?しかもそのようなしかめっ面で・・・・他の人が見たらきっと爆笑しますよ」
あまり根拠のないことを言いながら至極淡々と言う。
寧ろそちらの方が爆笑まではいかないだろうが噴出しそうだ。
それを耳にしてどこか呆れた風に表情を変える諸葛亮。
とりあえず被っている輪巾をとって左手で顔に風を送る。
「い、いいえ・・・・、・・・・・・・あなたに、はぁ・・は、話がありましてね・・・・とりあえず、屋敷へ帰りましょう・・・・・・」
かなり息切れてるらしい。
そんな諸葛亮をよそに、は眉根を寄せて”はぁ、そうなんですか?”と、さも人事ですと言わんばかりの口調で吐く。
草庵に居たとき毎日のように畑耕して相当体力があるはずの諸葛亮が息切らせるほど全速力で自分の元へ来て話す内容がどんなものなのか、
はっきり言ってには分かりかねた。
そうしてとりあえず、は諸葛亮に伴ってあと数十メートルの屋敷への道を歩いていった。
続く→
コメント
久々更新、なんか中途半端すね;しかもヒロインちゃん大胆(大汗
てか、ヒロインちゃんが関羽と張飛のこと知らないっていうのは突っ込みなしで;
現実情報に疎いんですよこの子(そんなじゃ戦場やってけないって
あ、尺寸は当時の長さ採用です。一尺約23センチです。
ウインドウ閉じてくださいね
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