足跡をたどって
真っ白、一面の銀世界。
華北の冬はとても厳しい。
そんな洛陽の街道で二人の影が先を行く。
ざくざくと雪を踏みしめる音。
一つは力強く。
一つは弾むように。
後方の遅々とした歩みに夏侯惇が振り向く。
「おい・・・――何をしている」
「ほへ・・・?」
その呼びかけに、素っ頓狂な声を上げる。
そしてその場に踏みとどまって口を開く。
「何って、元譲の足跡(あしあと)たどってるのよ」
そう言って17になったばかりのはその人懐っこい顔を傾けて見せた。
それに呆れて、片手を額に当て夏侯惇は顔を顰めた。
「それは見れば分かる・・・そうではなく、何故そんなことをしているのかと聞いている」
はそれを聞くと何かを理解したように”ああ”と手を打ちながら夏侯惇を仰ぎ見た。
一層呆れる夏侯惇。
それを少し笑ってみせる。
そして、手を後ろ手で組むと、少し背伸びをして言った。
「えっとね、何となく」
「は?」
今度は夏侯惇が素っ頓狂な声を上げる。
「何となくね、元譲の足跡たどってこうかなーと思ったの。
でも、流石、元譲!背高いから一歩一歩ついて行くの大変だよ、何回転びそうになったことか・・・
わたしももうちょっと身長ほしかったなぁ」
言って顔をほころばせた。
それを聞き、呆れて肩を落とすと、夏侯惇は踵を返して歩き始める。
「全く、転びそうになるくらいなら止めておけ。
そもそも、孟徳に呼ばれている刻限をとっくに過ぎておるのだぞ、また思いつきで何をやらされることか・・・」
言いながら、いつだったか騎乗しての雪合戦をやらされたことを思い出す。
もう成人しているというのにあんなことをやらされた挙句、雪まみれになりながら帰り、風邪になり損ねた。
当の本人は、まぁ、本人宅の近くでやっていたのだ、その後直ぐに家へ暖を取りに帰り、翌日鼻を啜りながら現れた夏侯惇を指で指しながら笑っていた。
とまぁ、話はさておき、目前の角を右に曲がろうとした時だった。
後方から足で踏むよりも一層大きな音と共にの悲鳴が聞こえた。
びっくりして後ろを振り向くとそこには案の定、雪に顔を突っ込んだが雪の上で倒れている。
それを見て夏侯惇は今日、何度目かは知らないが呆れて額に手を当てた。
「言わぬことではない・・・」
言いながらに手を差し出す。
「えへへ、有難う」
そう言って少しも悪びれた風を見せることなく夏侯惇の手を借り、立ち上がる。
雪の冷たさを得た手はじんわりと熱く、しかし人肌は心地好いぐらいの温もりを感じることができた。
雪を払うを確認し、夏侯惇は再び前を向く。
「行くぞ」
「はーい」
それでも先ほどの行為をやめようとしない。
夏侯惇はもう諦め、そのまま歩を進める。
但し、先程よりも歩幅を縮め、に合わせて。
ざくざく踏みしめる
弾むように
力強く
この先にどんな末路があろうとも
それが例え望まぬものだったとしても
私は彼の背中を
彼の残した足跡(そくせき)を
辿ってゆきたい
いつまでも、いつまでも
今のこのひと時のように・・・
終わってしまえ(え
お疲れ様でした、そして読んでいただき有難う御座いました。
隷です。
激しく短いですねー、一体この話は何年前に書いたものだろうと思ってみたら
2年ぐらい前のものでした(オイ
部屋掃除していたら出てきたんです、ひょっこりと(爆
はい、すみません、真面目にやります(無理でしょ?
・・・苦しくなってきたので、これにて御免(マテ
2005.07.22
閉じてください
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