大きな屋敷の隅々に響き渡る軽やかなピアノの音色・・・


時に優雅に


時に陽気に


その音色は響き渡る








その音に引かれるようにパンナコッタ・フーゴは屋敷の中に入るとピアノの音のする部屋へ進んだ

その部屋に近づくにつれて、その音はだんだんと大きく耳に入ってくる

階段を上り、そしてまた右に二階角を曲がり、その目の前の階段をもう一度上って今度は左に角を曲がり・・・


広い屋敷は角や階段がいくつもあり、長い廊下の途中にはいくつも部屋があったが

フーゴはここには来なれているらしく迷わず先に進んだ


長い石造りの廊下の先には縦長の窓があった

窓は開いているらしく心地よい風が入ってくる

春の陽気な暖かい風だ

不快ではない

その窓側から数えて3番目の部屋の前でフーゴは足を止めた



部屋の中でピアノを弾くのはこの屋敷の主、

合計4ヶ所ある窓を半開にしているこの部屋は春風が丁度いい具合に吹き込んでいた

カーテンを心地よく揺らしている

はただその風に合わせるかのようにピアノを弾いていた

ただピアノを弾くことに集中し

その音色を聞くことに集中していた


「ショパン、ワルツ第1番作品18『華麗なる大円舞曲』・・・ですか?」

その声に気づき顔を上げる

ピアノの向こうに見えたのは扉を後ろ手で閉め終わりこちらに歩みだしているフーゴだった

手を止めようとしたを確認してフーゴは右手を出して言った

「あ、続けて下さい」

それを聞いては続けた

フーゴはの横に立つとまたその音色に聞き入った

曲が終わる数分間だけ・・・



「流石ね・・・あそこまで細かく曲名を言えるなんて」

ひととおり弾き終わりはフーゴに向き直っていった

「いいえ、そんなことはないですよ、あれは名曲ですし誰でも知ってますよ」

「でも、曲名をはっきりといえる人は少ないわ」

そうですか?、とだけフーゴは言うとどちらともなく笑い出した

春の静かで長閑な昼の時間

・・・リクエストをしてもいいですか?」

「ええ、かまわないわ」

の受け答えを聞きながらフーゴは丁度ピアノの真横にあたる位置にある窓辺へ進んだ

そして、窓の縁に手を置くと外を見ながら言った

「では・・・夜想曲(ノクターン)作品9-2をお願いします」

「了解」

言うと、は静かに弾き始めた

それは、やさしく、甘く響き渡り何とも言えない心地よさがあった

そしてそれを弾き出すの指使いもとても繊細で優雅であった

後ろを振り向いたフーゴはその指の動きに見惚れた

はいつからピアノをはじめたんですか」

唐突な質問に視線をフーゴに向けるも、その指は動かしたままだ

少し間が会った後少し微笑んで答えた

「さぁ、いつだったっけ」

「いいじゃないですか、教えてくれても」

「・・・物心つくちょっと前よ」

そう優しく微笑みながら言った

風に乗り響き渡るピアノの音

その風は優しくとフーゴの髪をなでた

そして、その風が室内に入るたびに窓枠にかかるカーテンを揺らした



少し短めの曲のノクターンはあまり長い時間をかけずに終わった

優しく、静かに




「ありがとうございました」

「いいえ」

フーゴは礼をいうとの元に歩み寄りそのいすの背もたれに右手をついて前かがみになった

丁度を見下ろす感じだ

そして、開いている方の手での髪を右耳に掛けた

そこにはアキレア(ノコギリソウ)を象った飾りがゆれていた

「今度はの1番好きな曲を弾いてください」

少し驚いたような顔をしては顔を上げた

「わたしの好きな曲で・・・いいの?」

「ええ、がどの曲をすきなのか知りたいんです」

「前教えなかったっけ??」

少し笑って言うに、フーゴも微笑み返した

「いいえ、一度も」

「そうだったっけ?ま、いいわ」

そう言っては弾き始めた

それは雄大な曲だった

そう、力強く、雄大な旋律

「ポロネーズ第6番作品53『英雄』・・・」

「ご名答」

またも言い当てたフーゴをもう、それが当たり前の事かのようには言った

まだ陽は丁度、南中高度に達したところだ

部屋に優しく陽が入る

横に立つフーゴは目を細めながらの弾く姿を見ていた

楽譜こそないがその旋律を確実に一つの間違いもなく弾き出しているは指に意識を集中させていた



曲が終わるまでの間は2人の間に会話はなかった


ただ部屋に入ってくる風が髪をなでたりするだけで・・・




その長めの曲が終わるとは取りあえず一呼吸おいた

「で、聴いてみてどうだった?」

そう言うとフーゴはピアノに肘をついて言った

「いや、らしいよ『英雄』と『戦い』なんて」

ちょっと驚いたような顔をしてはフーゴを見た

「やっぱわかったか」

「直ぐには分からなかったけどね、アキレアの花言葉は『戦い』だろ・・・・本当君らしいよ」

「それはどうも」

無言のまま互いに見つめ合う

ふと、フーゴがの顎を左手で少し上にあげた

「でも、にはカルミアが似合うと思いますよ」

「カルミア・・・花言葉は確か、優美な・・・・女性・・・・・まさか、わたしが!?それこそ似合わないわ」

自嘲気味に言うを気にせずフーゴは言葉を続けた

「いいえ、は本人が思っているほど男勝りな性格をしていませんよ、確かに、仕事のときはそうかもしれませんが
普段はとても女性的です」

自分が好いている、しかも、今まさに付き合っている人から言われ、流石に顔を赤らめる

もう、陽も大分、南中から傾いてきている

「・・・そ、かな?」

少し下に俯く

「ええ、そうですよ、例えばこんなときとか・・・」

言って、の顎を少し上にあげた

「え・・・」

どんなとき、と言おうとしたが、全て言う前に口が塞がれていた

優しい口付け

離れた後もはちょっとびっくりしていたが、すぐさま血相を変えた

「ちょ、バカ・・・急になんなのさ」

それを聞いて、フーゴ

「バカはないでしょう」

左手を額に当て顔を顰める

しかし、次の瞬間には笑顔を浮かべて言った

「でも、まぁ、許してあげますよ、だから」

「わけわかんないわよ、その理由」

今度はが顔を顰めた


だけど・・・


次の瞬間には二人は顔を合わせて笑いあう

それが彼らの日常


それが彼らの意味(なか)





時に優雅に




時に穏やかに




時に陽気に




時に繊細に




時に甘く・・・







   〜fine〜

   アトガキ

また終わりが微妙です。久々に更新したと思ったら
なんだこの出来は!?ってかんじです。しかも、これ
の取り掛かった時期が4月だったため、季節感が今
とずれている・・・・わけの分からない話。
結局のところ自分何を言いたかったのか???                        モドル?













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