玩具箱の中には











今日も、呆気ないほどの下らない仕事を終わらせては帰路につく。

そう、彼女にとって下らない、暗殺という仕事。

依頼されたターゲットは、その仕事のほぼ過半数を占める、醜い可愛げもない顔に、肥満した身体が特徴的などこぞの会社の社長。

裏でも活動しているような。

夜の街はいよいよ活気付いて、その光りで空の光を打ち消す。

ただ、それに負けじと白く光る丸い月が暗い暗い夜の空にぽっかりと穴を開ける。

長いロングの喪服のような黒のスカートを翻し、その裾にあしらわれた白のレースが僅かにひらひらと棚引く。

そして、少し高めの黒のヒールが舗装されたアスファルトの歩道をカツカツと鳴らした。

腰に巻いているコルセットのせいでもないその細いラインを夜の街に映しながら、街のはずれにある廃屋のような己の住むアパートまで歩く。



不意に、今日何本目かの街灯を通り過ぎたところで呼び止められた。

「・・・ヒソカ」

振り向くとそこには良く見知った男の顔。

素の方がイケていると思うのに、とは常日頃から思っていたがそれを知ってか知らずか当の本人は性懲りもなくフェイスペイントを施した顔にいつもの笑みを浮かべて立っていた。

「仕事は片付いたのかい?」

腕を組みながら言うヒソカには目を合わせるために少しだけ顔をあげる。

「綺麗さっぱり。ヒソカの方は大丈夫なの?今日”活動”があったんでしょう?」

「早退してきたよどうせ”ヒマな奴は”っていう召集だったし

「いいの?今度こそ直々に裁かれるかもよ?」

のその言葉にヒソカは何か企んでいるときの笑みを見せた。

「いいんだ◆それが狙いだから

「そっか、なら心配要らないね」

そんな受け答えを、今この場で第三者として聞いていた普通の人間ならばどこか突っ込みを入れるだろうが、生憎そんな人間は居ないしこの二人は普通じゃない。

「うん、心配要らない

案の定な相槌には少しだけ肩を竦める。

それにヒソカはククク、と喉を鳴らしながら再び口を開いた。

、君はこれから家に帰るつもりだったんだろう?」

「うん、そうだよ」

「ボクも行っていいかい?」

「全然構わないよ」

そう言うと、は踵を返して歩き出す。

二、三歩、歩を進めたところで未だ立ちっぱなしのヒソカを振り向いた。

「行くんでしょ?私の家。さ、行きましょ」

そうして、またスタスタと歩き始めるの後姿をヒソカは怪しく笑いながら追った。











の住むアパートの部屋についてからは、が自分の分とヒソカの分の夕食を作り、それを二人で食べたり下らない談話などをしていた。

時計の針が九時を指す今はヒソカはのこの部屋に置いてあるものをいろいろ物色していた(別に初めてきた訳ではなかったけど)

は組んだ手の甲に顎を預け、その両肘をテーブルに預け、自身の身体はソファに預けて目線の先の窓の外を何とはなしにボーっと見ている。

窓の外のずっと遠くに見える街の光りから夜空に浮かぶ満月に視線を移したのと同時ぐらいにヒソカに話しかけられた。

「ねぇ、?この中には何が入っているんだい?」

「ん?」

そう相槌を打っては後ろを振り向く。

そこには何処から持ってきたのか、約70センチ四方の箱が床に置いてあった。

確かアレは押入れの隅に適当に置いてあった箱だ。

箱を指差すヒソカにはソファの背もたれに向き直り腕を組んで再び顎を預けると目線だけヒソカに合わせた。

「それはね、わたしのコレクションが入ってるの。尤も、前のモノに飽きてきたら新しいモノに入れ替えて使うから、コレクションとはちょっと違うかもしれないけど。
そうね、遊んだ後は片付ける、わたしの玩具箱みたいなものかしら」

そう言っては口の端だけ吊り上げて笑みを作った。

ヒソカは至極興味を持ったと言う表情で口を開く。

「開けて見てもいいかい?」

「どうぞ」

首を少しだけ傾けて了承の意を表す。

ヒソカが箱の蓋を開ける。

はそれをただ傍観した。

蓋を開けきると、ヒソカは目を見開いてどこか吃驚したようだった。

だが、間もなく口に笑みを浮かべてを振り向く。

「まさか・・・にこんな趣味があったなんてね◆全然気づかなかったよ一体いつのだい?コレは

「さぁ、いつだったかしら・・・アナタと付き合う前からだから、そうね、優に一年は前だと思う」

「ふ〜ん」

そう言ってヒソカが視線を戻した、現在話のネタになっている箱の中のものは今しがた解体したかのような”人”だった。

そう、元々人間として成していたもの。

今はそんなものすら見る影もなく、ただの肉の塊となし、並々と満たされているそのものの赤い液体に赤黒い肉がただ浸っていた。

液体から僅かに見えるモノがかろうじて、人の手であると認識できるぐらいだ。

その中は、肉とは言わず、眼球、脳、臓物までもが何の区別なくただ浸り、浮いていた。

「新しい奴を片付けないのかい?」

ヒソカが視線を外さず、口だけ開く。

薄暗い部屋の僅かな光りを赤い液体が反射して天井に映している。

「だって、いないんだもん」

そう言っては節目がちに床を見つめた。

ヒソカが振り向いてを見る。

「どんな奴がお目当てなのかな?」

その問いには顔も視線も上げずに答える。

「う〜ん、大抵は可愛い子。後はわたしがどうしようもなく好きな子とか」

どこか嬉しそうには言う。

「じゃあ、それってボクも入るんじゃないのかい?」

「勿論よ、尤もそんなこと仕掛けたら、逆にわたしが箱行きだわ」

言って笑うにヒソカは歩み寄り身を屈めるとその顎を手にとって上をむかせた。

「別にボクは構わないよそこにボクが入っても、が入っても
でも、が入ったら、君みたいな能力をボクは持っていないから数日で腐敗してしまうけど・・・◆」

「そうね、ヒソカが入るならわたしの能力で半永久的に”新鮮”なまま保存しておくことが可能だけど、わたしが入った場合は醜く腐っていくだけね。
わたし、蛆虫だけは苦手なのよ」

そう言って溜息をつくをヒソカはただ見つめた。

「じゃあ、ホルマリン漬けにしてあげるよそれなら大丈夫だろう?」

「そうね、触ることができないけど」

ヒソカがから手を離す。

そしてがヒソカと目を合わせるとどちらともなく笑った。

世間一般の人から見れば怪しすぎるくらいの笑いだったが。

「どうだい?、これから一緒にボクと新しい”コレクション”を捜しに行くのは?」

唐突に言い出したヒソカの言葉には左手を口元に持ってきて窺うようにヒソカを見る。

「・・・・・・いいわよ、夜はこれからだし」

言って、不敵な笑みを浮かべる。

「決まったねじゃ、行こうか?」

扉に向かって歩み始めるヒソカの後をはソファから立ち上がって追う。

”玩具箱”の近くまで来てふ、と足を止める。

「ちょっと待って」

がヒソカを呼び止める。

ちょうど、ヒソカがドアノブに手をかけたところだった。

何も聞かず、ただ足を止める。

その間は何事か、”玩具箱”に念をかけた。

いや、”玩具箱”の念を発動した。

中にあったモノは今が手にしているモノ以外全て消える。

「それ、どうするんだい?」

ヒソカがが手にしているものについて聞く。

そう、が手にしている一本の手の小指のこれからの行方について。

「ん?コレ?プレゼントするのよ、次の”コレクション”に優しいでしょ?」

そう言って微笑むにヒソカが口を開く。

「ボクにはないの?」

それを聞いてはヒソカの下に歩み寄り、顔を上げるとまた微笑んだ。

「何言ってるの?あるに決まっているじゃない、わたしを全部上げる、身体も、心もね。だから、いつ壊したっていいのよ?」

それだけ言うと、はヒソカの代わりにドアノブを廻して外へ出た。

「それもそうだ◆愚問だったね

言ってもう、アパートの階段付近まで歩いて行ってしまったのあとをヒソカは追った。




黒が舞う


紅が舞う


そうして散る


二つの陰は一つの玩具で遊びまわり


切り裂き、引き裂き、引き千切る


思う存分遊んだ後は


玩具箱に片付けよう


次にそれを開けたとき



玩具箱の中には・・・・・・







END






はい、久々更新のお題ですが、微妙にグロ系な上に終わり方が意味深ですみません;
結局箱に誰が入ったのかはご想像にお任せします(殴
・・・この二人笑いすぎですな(全く
はい、微妙なものですんませんでした(もう少しすまなそうにしろよ
背景もあんま関係ないし;
・・・では(えぇ!?



閉じてください

















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